第86話 お出かけ!2

「なんかもうこの場所もすごいってのはわかったわ」


 本来なら鉄道模型のレイアウトしかない。というかしか目に入らない悠宇の家だが。初めてこの世界へと来たシェアトには、初めて見る物が少ないなりにもたくさんあり。そこそこの時間驚きっぱなしだった。

 そして一通りシェアトに見えた頃。玄関のドアが開く音が聞こえて来た。


「服持ってきたよー」


 少し大きめのカバンを1つ持って海楓が帰ってきた。


「とりあえず。着れそうなの持ってきたよー」


 シェアトの前へと海楓は行くとカバンの中身。服をシェアトへと見せる。


「うんうん。これがこっちの服なのね。へぇー」


 海楓から服を受けとると、シェアトは珍しそうに見ていく。


「これ海楓たちが着ているものと同じ?になるの?」

「全く同じデザインはないけど、まあこっちでなら普通にみんなが着ている服かな」

「さすが海楓だな。いろいろ持ってるな」


 後ろからちらりと様子を見つつ悠宇がつぶやく。


「普通このくらいは持ってるから。悠宇が少ないんでしょ」

「置く場所がないからな」


 実際悠宇の私服は少ないが――今はそのことはおいておこう。


「って、悠宇先輩。シェアトが着替えるから出て行ってください」


 悠宇が女性陣を見ているちかが悠宇の背中を押し出した。


「自分の家から追い出されるか――って、まあそうなるか」


 狭い悠宇の家。着替えるとなると、玄関のところが一番まだ広い。


「えっ?別に居ていいわよ?」

「出ます」


 シェアトは何とも思っていない見たいだったが。ちかの視線を後ろから感じている悠宇は足早に家の外へと出た。


 外に出ても玄関の前では、室内からは女性陣の話し声が聞こえて来ていたので、悠宇はなんとなくだったが声が聞こえないところまで離れた。

 ちなみに外はまだ休日の朝ということもあってか静かな方だ。平日なら学校がそろそろ始まる頃の時間である。


「――マジで時間経ってないのか。不思議なこっちゃ」


 あたりを見つつ悠宇がつぶやく。

 今の悠宇はすでに今日という日をほぼほぼ過ごしたはず。という記憶があるからだ。でもまだこちらでは朝。起きて間もない時間なので変な感じがしていた。


「っか、シェアトを連れてきたが大丈夫なのか――こんなこと獅子とかに知られたらだな。って、家の前ぶらぶらしているとやばいか」


 ちなみに獅子が絶妙なタイミング。悠宇たちがこちらの世界に居なかったちょっとの間に今悠宇が居るところを歩いていたりするのだが――もちろんそれは悠宇が知ることはない。

 

 それから悠宇が自分の家の庭などに居ると『いたいた。悠宇ー』と、海楓が悠宇に声をかけてきた。そして少し遅れてちかとシェアトも海楓の後ろを追いかけてきた。

 ちかに関しては『一応レバー戻してきました』と、すっかり悠宇が忘れていたことをしてきてくれる完璧さだったりする。

 あと、着替えたシェアトは少しだぽっとした服装。海楓の部屋着ではないが。ゆったりとした感じの服を着ていた。


「意外と海楓――大きい」


 悠宇のところに来るなりシェアトが何やら胸あたりを触りつつ言っていたが。悠宇は聞こえなかったことにした。

 まあ身体は人それぞれである。

 というか。改めて悠宇が3人を見た。ではないが。3人が並んでいたので改めて知る事となったが。この3人が並ぶと、一番小さいのがシェアトである。

 次に数センチ差でちか。

 そして10センチ弱海楓の方が高い。なので並ぶと今まではちかが一番小さかったのだが。それより小さいということを悠宇は再確認した。

 そもそもシェアトは先ほどまではドレスを着ていたからか。あまり小柄には見えていなかったのだが。今は小柄――というより。悠宇の脳内では初めてシェアトを見た時の光景が思い出されていた。

 決して変な意味ではなく。あれが本来の姿か――と、確認のちまた記憶の奥深くに封印した。

 

「悠宇が私たちをいやらしい目で見てる」

「見てないわ」


 少し悠宇が3人を見ていると、すぐさま海楓がからかってきたがいつも通り流した。実際かちょっと考えていたが――。


「ってか、悠宇。この後買い物行くことになったんだけどー」

「だけど?」

「まだお店が開いてないから。先にモーニング行こう!って話になったから」

「じゃ、俺は留守番か」

「「なんでですか(おかしいでしょ)」」


 悠宇が留守番の選択肢を選ぼうとすると、ちかとシェアトが同時に反応した。


「いや、俺必要?って――この3人と一緒ってめっちゃ目立つ――」


 悠宇が改めて3人を見る。

 学校やらで聖女様などと呼ばれてる海楓。

 今はそこまで目立つことは――いや目立っている。暗めだが透明感のある青色の髪という特徴のあるちか。

 そして今はさらに金髪の美少女が追加され――いやでも一緒に動けば目立ってしまう状だった。 

 こんなのなんか起こるだろうとため息をつく悠宇だった。

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