第46話 口封じ――
悠宇たち3人が実りの町の隠し部屋のようなところへと案内され待機することになり。少し話していると、そこにガクとアク、ベクの3人がやって来た。
アクに関しては先ほど海楓を連れてきたときと変わらず明るい雰囲気だが。ガクに関しては難しい顔。そしてベクに関しては大量の汗をまだかいていた。悠宇は『ベクさん。本当に脱水症になりそうなんだけど――』と、少し心配したのだが。それと同時にガクが3人を見て話しだした。
「海楓殿のいう通りじゃ」
「「えっ?」」
ガクの言葉に悠宇とちかが驚き海楓を見ると。海楓は特に驚いた様子はなく『あー、やっぱり』という落ち着いた様子だった。
そんな海楓の様子を見た悠宇とちかは――まあ簡単に言えば混乱である。『何が何だか――えっ?海楓のさっきの話当たっていたの?』とそんな感じで頭の中が混乱していた。
「とりあえず状況を説明させてもらうとな」
するとガクたちが悠宇たちの正面になる席に座り大まかだったが現状を話してくれた。
かくかくしかじか。ドッカンバッコン。かくかくしかじか。どどん。である。
「――海楓の言っていたことがほとんどあたりかよ」
しばらく話を聞いた悠宇がつぶやく。
結果としては、今悠宇たちがいる町。国の現状は本当に海楓が先ほど想像で話していたことに近い状況で、そして先ほど出てきた名前も――。
「今わしらは繋がりを欠けている。他の町の奴らがうまくやっていると信じるしかないが――でもそう簡単に町を手放すような奴らに任せた覚えはない」
「えっと――はい」
すると、ちかが恐る恐る手を挙げて発言をした。
「あのー、今のガクさんの話をまとめると――ガクさんは本来は王様で、でも今はえっと……いろいろあってたどり着いた実りの町の長ということになっていて。その大炎上。悪夢の時に王女様を守るために今はここに――?ってことなんですよね」
「そうだ。シェアトの両親は早くに病で亡くなった。なのでわしがくたばれば自然と次の王はシェアトだ。そしてわしも年だ。何が起こるかわからなかったから早くにシェアトに座を譲ろうとしたら――じゃったのだ」
「えっと、さっきの話しだと大炎上?があった時シェアトさんはまだ幼くないですか?」
「ちか。多分だけど。ここでは赤ちゃんでも王様。女王様になれるんだと思う」
「えっ!?」
ちかの問いには悠宇が答えた。そして悠宇の回答が正しかったらしく。ガクは頷いていた。
「多分話的になんていうのか――赤ちゃんが王で周りが支える的な――」
「そ、そういうことですか。って、赤ちゃんの王様――」
どうやらちかの中では子供が王様になるというのがピンとこなかったらしい。そして悠宇との話で納得したのかは――微妙な表情だったが。とりあえず自分自身を納得させようと頷いていた。
「――まあ悠宇殿の言う通りだ。ちなみにわしも幼き頃に英雄様から選ばれた親父がとっとと王様の座なんかお前にやる。俺は自由気ままに暮らす――とかで選ばれたくらいだからな。そしてわしは周りに支えられ今に至る。まあ本当はわしもシェアトの父親にとっとと譲るはずじゃったんじゃがな――おいぼれが頑張ることになったんじゃよ」
「な。なるほど――」
悠宇がこの国の人は王様になりたいというより。なっても早く次に譲り自分はのんびりしたい人が多いのだろうか?と、そんなことを思いつつ返事をしていると。ここまで口を開かずに話を聞いていたアクが口を開いた。
「まっ、つまり今我々の希望は――シェアト様だ」
「ああ。その通りじゃ。そしたらだ。この馬鹿ベクがあっさりと悠宇殿たちに――」
「すみませんでした。あまりにも久しぶりに他のところの人と話したもんで――」
再度攻められるベクは大量の汗――本当に大丈夫だろうか?と、今度は悠宇が思うと同じくして、ちかも同じことを思ったりしていた。
「はぁ。ってことで、悠宇殿たちが敵とは思っていない」
すると、ぴしっと、ガクが悠宇たちの方を見る。目には力がこもっている。その視線から悠宇をはじめちかも海楓も『なんか嫌な予感』と、感じた瞬間。
「我々に協力してほしい。主に悠宇殿。悠宇殿の能力で町と町を再度繋いでもらいたい。悠宇殿が再度繋いでくれた線路は我々が守る。それにそもそも再度線路を繋ぐことを誰にも禁止はされておらん。できるもんならしてみろだったしの。向こうはこちらにその技術能力がないとすでに思っているじゃろう。だから今こそなのだ。悠宇殿は神が仕えし――」
「いやいやちょっと待ってください」
さすがにどんどん話が膨れ上がっていき。遂には神様扱いされそうになった悠宇が口を挟んだ。なお、その時のちかと海楓は神扱いされている悠宇を見つつクスクスと笑っていた。
「なんじゃ?」
「俺神様じゃないので」
「いやいや、明らかに悠宇殿のスキルは」
「いやいや、神様じゃないですから――って、えっと、本当は俺たち関わらない方がなんかいい気がするんですが。よそ者ですし」
「――なら、悠宇殿たちにはここで死んでもらうしかあるまい」
ガクが腰の剣に手をかけた。それと同時に威圧感が室内を覆う。
「「「――へっ」」」
急に殺気に襲われる3人。もちろん対人の経験などない悠宇たちは本当の殺し合い。殺気の雰囲気に一瞬にして飲まれた。くすくすと神様扱いされた悠宇のことを笑っていたちかも海楓も笑っていた表情のままガクの方を見て固まっている。
今ガクが剣を抜けば机もろとも悠宇たちの身体は真っ二つになるだろう。
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