第143話 叫んでみた ★
あの男が居る。
肌艶よく。上機嫌な様子で町中を歩いている。見るからに元気。元気が溢れているような様子だった。
この場所の説明は――なかなか難しいので、とりあえずあの男がいる場所と言っておく。
いつも通り自由気ままにあの男は過ごしている。
「いやー。さっきの子――良かったなー。あのままだと蘇れるレベルで良かったなーうんうん」
何をしていたかは――割愛しておこう。
とにかくあの男今日も楽しんでいる様子だった。そりゃここは――ざっくり大雑把に言えば自分が思うように自――。
と、そんな時だった。
にやにやと明るい雰囲気で独り言を話していたあの男がふと立ち止まった。そしてあたりを少し見回すような素振りの後。
「なっ。これは――緊急事態か!なんかあったか!」
急に慌てだす男。
そしてふと空を見ると。そのまま青空に向かって叫び出した。
「悠宇!悠宇!ディオラマを見るんだ!機関車に何か起きたとピンと来たぞ!悠宇!ディオラマを見るんだ!」
男の声は少しだけ力のこもった声が一部で混ざっていた。
その力とは。空間を捻じ曲げてしまいそうな――というか、実際少し捻じ曲げてしまっていたのだが――。
「悠宇!ディオラマを見るんだ!」
とにかく、どうやら男は何かを感じ取った――または通知?のようなものが来たらしく。少し慌てた感じで何度か空に向かって叫んだ。
もうしばらく顔を見ていない――に向かって。
「悠宇!ディオラマを見るんだ!何か起こったと――」
なお、これが悠宇の睡眠時間を奪い。
翌日の悠宇が大変な思いをすることになるとは――もちろんこの男。知る由もなかったが。
というか、この男。散々叫んでおいて、その後すぐのことだった。
「――あっ、別にいいのか。勝手に元通りになるようにしていたかー!悠宇。さっきの気にしなくていいぞー!勝手に修復されるわー。ってことだから!」
そんなことも言っていたのだが。
もちろんその声は届いていなかった。
そもそも男が冷静になったため。もう言葉に力がもう籠っていなかったこともあり。その最後の言葉に関しては全く。小さな気配すら悠宇のところへは届くことはなかった。
その後男はもう叫ぶ必要がなくなったので――。
「よーし!次の女の子行ってみよう!」
……いつも通りの戻るのだった。
そして男は建物の中に消えていった。
これはあの男の居るところで起きていたこと。
そして誰か他の者が知るということは絶対ないことだった。
ちなみに騒いでおいておきながら。男にとって先ほどのことはちょっとしたことのレベル。なのでサラッとこんな出来事は忘れてしまうのだった。
――被害を受けた方はしばらく気にすることだったが……。
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