第142話 幽霊
……今何か別空間での会話が聞こえたかもしれないが。
多分気のせいである。
ちなみにだが。というか当たり前のことだが。死者がいきなり復活することはない。
そう死者は蘇らない。
死者がポンと蘇生することはこの世界にはない。
この世界では絶対にないことである。
突然過去の出来事が湧いてくる事くらいはあるが――。
――いや、通常はそんなこともあっては大変な騒動になるのだが……あの男だから仕方ないと言っておこう。
気にしたら負けである。
◆
悠宇がちかの家の室内へと初めて入ってからまだ数時間後の事。
しかし悠宇はすでに自分の家で就寝ちゅ……。
「……ぅっ――うん――?ゆめ……?って、まだ寝て1時間ちょっとしか経ってないし」
就寝中だったのだが。ふと目を覚まし。むくりと起き上がった。
「――今……あれ?なんか夢を見ていて――めっちゃ面倒なことに巻き込まれたというか。誰かがやらかしたこと――あれ?なんだっけ?どんな夢見てたっけ?うん?って――俺は夜中に何をしているのか」
身体を起こした後。悠宇は独り言をつぶやいていた。
なお現在悠宇は1人でいる。というかこれがスタンダート。今の悠宇は基本家では1人である。なので急に夜中に悠宇が目を覚まし。独り言を言い出しても誰かが反応することはない。
『――宇――ディオ――』
……反応することはないはずなので――悠宇以外の声が聞こえるということは……。
「……」
さすがに幽霊を信じない悠宇でも独り言をやめた。というかフリーズしている。
身体を起こした状態。独り言を言っていた姿勢で悠宇が固まり。暗い室内の一点を見ている――いや、どこも見ていないかもしれない。単に固まっているのでたまたま正面を見ているだけ。かもしれない。
なお、今悠宇の脳内では『いやいやいや。なんか聞こえた。なんか聞こえた気がすんだけど。何を言っているかはわからないけど。なんか言った。いや、なんか聞こえた気がする。確実に俺以外の声が聞こえた気がする。もしかしてこれが夢の中か?でもなんか身体はちゃんとこの場にある感じがすると言うか――』という感じで超高速で脳内でいろいろなことを考えていたが――。
『――悠宇――ディオラマを――んだ』
「いやいや誰だよ!?!?」
再度聞こえて来た声に悠宇は次は反応し。慌てながらも近くにあったスマホを手に取り。画面を付け少しだけ明かりを――などと言うことをしつつ。その場に立ち上がり。周りを見た。
ぼんやりと悠宇の手元周辺が明るいだけの室内。他は暗い。
基本寝るときは真っ暗にしている悠宇。戸締りなどもちゃんとしているため。窓から少しだけ光が入ってきているだけで窓の近く以外はほとんど真っ暗。
悠宇はあたりを警戒しつつゆっくりと視線を動かす。
「……」
確実に自分ではない誰かの声が聞こえた。
夢かもしれないけど、現状あたりをゆっくり見つつスマホを持った手でスマホを落とさないように身体をつねっても痛みがあるだけで、目は覚めない。というか眠気が一気に飛んだ悠宇。誰かいるという気配はないが。一応身構えつつ部屋の電気を――付けた。
カチッという音とともに室内が明るくなる。
すると、そこには見知らぬ人が立っていた――ということはもちろんなく。
そんな事あったらとっくに悠宇は悲鳴を上げている。または驚きで気絶していた――かもしれないが。とにかく今悠宇が電気を付けた段階では誰も室内にはいない。そして先ほど聞こえて来た声も――。
「……何も聞こえない?」
なくなっており。静かな室内。真夜中の時間となっていた。
「シェアトのこともあったりして俺――疲れているのか?だから夢とこんがらがった?」
先ほど聞こえた声にまだ少しだけびくびくしている悠宇はそんなことをつぶやきつつ。とりあえず。その後室内のチェックをした。
なお、今この悠宇の家には悠宇しかいない。
これは正しいこと。
悠宇しかいない場である。
でもその確証が持てない悠宇はしばらく何度も何度室内を見回すことになるのだった。
そしてその時模型ももちろん見た。見たので悠宇は蒸気機関車がいつものところにある。というのは確認した。
――本当はないのが正解だったのだが。向こうの出来事を知らない悠宇が気が付かないのは仕方ないことである。
まあ実は先ほどの声が言っていたことはその悠宇の行動で達成されたのだが――もちろんそんなことはわからない。気が付かない悠宇。
結局。悠宇はそれから何度か室内を見回り。
中途半端な時間になってしまったため。そのまま起きていることになったのだった。
――決してオバケ怖い。寝れなかった――ではないと。もし誰かが居たら悠宇は言っていただろうが。この家には悠宇しかいない。なので悠宇は単に寝れず起きていた。ということになった。
「――絶対なんか声が聞こえたはずなのに――って、あれ?なんて言っていたんだっけ?っか――なんかキーになりそうな言葉が聞こえたような――ってもういいや。よし。そのうち明るくなるだろう。とりあえず――もう1回見回るか」
ぶつぶつつぶやく悠宇は再度室内の見回りを再開したのだった。
この夜悠宇が何回見回りしたかは――本人しか知らない。
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