第159話 昔昔あるところに魔王が4 ◆
ルイ・ノグモの子の悲鳴が響き渡った建物内。
もちろんルイ・ノグモの妻から警備の者すべてが悲鳴の聞こえた部屋へとすっ飛んできた。
そして室内で見たのはすでに息絶えて少しばかりの時間が経ったであろうルイ・ノグモの亡骸に自分が血だらけになるなどお構いなしに抱き着くルイ・ノグモの子の姿だった。
それからしばらくは、それはそれはドタバタのルイ・ノグモの周辺。魔王が暗殺されたとなればなおさらである。
しばらくの間はルイ・ノグモの妻が代行という形で指揮をとっていたが。それにも限界がある。魔王不在の現在。どの勢力が何をしでかすかわからない状況だ。
しかしそんな中でもルイ・ノグモの妻はさすがだった。できる限りのことはした。もともと緊急時のことはルイ・ノグモから聞かされていたことも大きかったが。それでも通常なら慌てふためく状況だったが。瞬時に切り替え迅速に対応をしたのだった。
けれど、妻が頑張ろうとさすがに限界はやって来る。魔王を失くした今。妻も子も身の安全は保障されない。ルイ・ノグモの妻もそれがわかっており。子の安全を考えれば早く誰かに魔王を引き継ぐ――と、なった時だった。
「――父の跡は僕しかいない!」
まだ6歳だったルイ・ノグモの子が立ち上がった。
それはついこの間まで甘えていた6歳の風格ではなかった。
まるで誰かが乗り移った――いや、ルイ・ノグモと同じような風格が突如として現れたのだった。
周囲はさすがルイ・ノグモの子と圧倒されたのだった。
そんなこともあり、ルイ・ノグモがこの世を去った後はまた混乱の世に戻るだろうと、思われたが。そうとはならなかった。
突如として才能を開花させたルイ・ノグモの子。
現在は新ルイ・ノグモ。父の名をそのまま引き継ぐということがあったこの地では珍しいことではなく。なんの問題もなく。6歳にして新たな魔王。ルイ・ノグモが誕生したのだった。
新しいルイ・ノグモは誰かが裏で動いている。操っているのではないだろうか。と思わせるような行動をすぐに開始した。
それはそれは本当に6歳なのか。と思われる行動ばかりで、周りはルイ・ノグモに慄くこととなったのだった。
それから1年。2年。3年と月日が経つにつれ。ルイ・ノグモは父をも超す強者と日々成長していった。
それは魔族の中でも異常な成長のスピードだった。
さらにそのルイ・ノグモの成長と同じようにエーテル域も活性化していっていた。
周りの国との交流もほとんどなくても国内でのやりくりが十分できるまでになりつつあった。
そして、気が付けば新。ルイ・ノグモがエーテル域の国を治めてから15年がの月日が経っていた。
その頃の国はというと――。
はっきり言って貧しくはないが。豊かでもなくなっていた。普通と言えば良いことかもしれないが。一時期。数年前の国の力の急上昇から見ると早くも下降に入ったような状況だった。
通常魔族の寿命は人などから見れば長い。そのため一度循環が上手く回りだせばそれは当面の安泰ということにもなるのだが――今回はあまりにも下降に入るのが早かった。
そして国全体の空気も何やらおかしなことになりつつあった。特にここ数年。ルイ・ノグモが表舞台に姿を現さなくなってきてから、少しずつだが。エーテル域の活気というものが弱まっていっていた。
一体ルイ・ノグモに何があったかというと――。
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