第160話 昔昔あるところに魔王が5 ◆
『自分も父のように立派な魔王になる!』
それはルイ・ノグモの子。本人の本当の気持ちだった。
そしてそれは何もなければ父の跡を継ぐ者としてこれからの人生を歩んでいける力も秘めていた。
――しかし現実は違った。
◆
「――あっ、あっ――――うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
あの夜。
ルイ・ノグモが暗殺された夜何があったか。
簡単に言うとあれは――ルイ・ノグモの自作自演のようなものだった。
ルイ・ノグモは実の子に自分を殺させたのだ。
――いや、正確に言うと自分の子の心を身体の奥深くに押し込め。自分が乗っ取ったである。
ルイ・ノグモは見た目は明らかな脳筋。力こそすべてと現に言うような者。しかし実際は頭もかなり切れた。
そしてルイ・ノグモあることを思いついた。
他者の身体に乗り移る方法があるのではないか?と。
魔族の命も人同じで永遠ではない。
誰しもがいつか終わりは来る。
ルイ・ノグモもそれはわかっていた。
わかっていたが――でも誰かの身体に乗り移ることができれば――自分が年を取った時。新しい身体に自分が入れれば――その繰り返しが出来ればずっと自分の思い描く国。世界ができるのではないかと。
ある日ふとそんな考えを起こした。
結論から言えばそれは変態チート爺レベルでなければいけない。なのでこの世界に元から住んでいるルイ・ノグモでは難しい事。限りなく不可能なことだった。
しかし、完全に不可能というわけではなかった。
本当に一時的だが。相手の意識を操るという方法があるにはあったのだ。けれどそれは催眠術のようなもの。身体を自分の思うように。そもそも他者の身体に入り込むのとはまた違う。けれど、ルイ・ノグモという男は諦めなかった。
自身の勢力を拡大しつつ。同時進行で他者の身体に乗り込む方法を考えていた。この男はすべてを自分の物にしたかったのだ。
そしてあの夜。正確には数日前となるが。ルイ・ノグモが魔王になる前の時点ではある程度の方法を思いついていた。あとは実行するのみとなっていた。
しかし実行すると現在の自分の身体は死ぬことになる。
もし乗り移りが失敗すればそこで自分の命が途絶えるだけとなるが――ルイ・ノグモは迷いなく実行した。
結果として少しでも成功する可能性をあげたルイ・ノグモは賭けに勝ったのだった。
自身と繋がりの強いものだと可能性が上がると考えたルイ・ノグモは自分の子の日課を利用した。
朝自分を起こしに来るタイミングというのは把握していた。なのであとはそのタイミングに合わせて、自身が思いついた。考えついた方法。魔術を使うだけ。
ちなみに、ルイ・ノグモはこの方法が他に漏れることのないように証拠は何も残さなかった。そもそも成功すればそれを今後も繰り返し自分が使うだけなので自分が覚えておくだけで良い。また失敗なら自分が死ぬだけ。その際にこのことが他に漏れるのは面白くなかったため。ルイ・ノグモは一切何も残さなかったのだった。
そして、ルイ・ノグモの考えた魔術は成功した。自分以外誰も知ることのない魔術を――。
朝自分を起こしに来た子が飛び乗ってくるタイミングで準備していた魔術を発動。その際に膨大な魔力を使う必要があったため。発動と同時に元のルイ・ノグモの身体は急激に朽ちていく。しかしその時点ではルイ・ノグモの魂は移動しており。無事に自身の子の中に――。
さすがにすぐは子の魂と混在。一時的に子の方が混乱。錯乱状態となったが。ルイ・ノグモはそれも想定済み。そのようなことが起こるだろうと思っていた。そのため特に慌てることはなかった。
叫び出した自身の子をそのまま利用。そしてすでに乗り移りが完了していたため。実験がてら目の前で生命活動を停止して元の自分の身体を見つつ。今の自身の力を使ってみたところ――いとも簡単に元自分の身体が裂けた。急激に朽ちていっている身体だったが。身体が裂ければもちろんまだ鮮やかな血が体内から噴き出した。
ルイ・ノグモはそれまでも利用し。元の身体を再度裂けさせ。そのまま元自分の身体に抱き着いたのだった。
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