第80話 俺の名は――2 ◆
腰に服装とは似合わない高価な装飾のさせた剣を携えた茶髪のボサボサ頭の男性が落ちている枝などを踏みつつ歩いている。
「――迷子……にはなっていないな。まだ場所はわかっている。にしてもどこにも出る気配がないな……」
闇雲に森の中をあるいていた俺。
現状――シーノ地方の近くに居ることはわかっている。
先に言っておくが迷子ではない。
これから王になる人間が自分の国の中で迷子になるということはありえない。
そうだ。今の俺は自分の国を知るために無駄にたくさんいろいろなところ。そして危険なところを歩いているのだ。
そしてたくさん歩いたからこそ。こうして歩いていたからそこそこ多くの魔物退治もできた。
俺は休憩がてら一度岩に腰を下ろし背負っていた袋の中身を確認する。
そこには黒っぽい。赤黒い単なる石――ではなく。不思議なオーラを感じる石がたくさん入っている。よく見ると石の中が光っているようにも見えなくもない。
これは魔石やら命の塊やらと、地域によって呼び方は違うが。何かと利用価値があるもの。そしてここまで来た俺の今までの戦利品だ。途中魔物を倒したりした際に入手したもの。または落ちていたものを集めてきたものだ。
もちろん俺は魔物が居るという知識はあった。しかし俺の予想より多くの魔物に遭遇した。
もちろん遭遇したからと言って逃げるということ一切していない。なんせ俺は王になる男。魔物くらい味方に付けてもおかしくない男だ。しかし今のところはまだ王と認められていないのか。認知された瞬間に襲われたため。あっさりと返り討ちにしておいた。
まあ簡単に返り討ちにできたのは、たまたま初めの魔物が持っていた武器を奪うことに成功したからということもあるが。
でももともと俺が強い。そう。王は強いのだ。
「にしてもこの剣。なんで魔物が持っていたんだ?」
俺は座りながら魔物から奪った剣を確認する。
健は一般的な片手剣とでもいうのだろうか。そこそこ良く使われていそうな。使いやすい大きさの剣だが。装飾はかなり豪華。柄の部分なども細かい装飾がある。そして何より剣からも何とも言えないオーラがあるように思えた。
明らかにどこかの有名な騎士が持っていてもおかしくないような剣。しかしそれを魔物が持っていた。というところから俺が考えた答えは――。
「なるほど。魔物に負けて奪われた。ダメだな。俺の国の騎士ならあのレベルの魔物ならあっさり倒してもらわないとな。今の王は力がないと見た。よし。とっとと俺が王になるか」
そんな答えにたどり着いた俺は剣を鞘にしまうと袋も持ち直し立ち上がった。
「よし。行くか――って、この国の首都はどこだったか?シーノ地方の北にはヨート地方やサーカ地方ラー地方があるのはわかるんだが――どこだったか――まあとりあえず迷子じゃないんだしまた歩くか。とりあえず北だな」
結局行先は決めず――(実は迷子)の茶髪のボサボサ頭の男性が南東へと歩き出したのだった。
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