第79話 何時?
「ねえここを通ったら私死んじゃうとかないわよね?」
少し心配そうに確認作業をしているのはシェアトである。
「――さすがにそれは何とも――なんだよな」
「私たちは普通に通れるけどね」
「でもシェアトは――向こうの人だよね?どうなるんだろう?」
一方の悠宇たちはというと、普通にドアを通過して今は悠宇の家の裏口のところに立ち。まだ駅舎の方に残されたままのシェアトを見てた。距離としては1メートルもない。
「本当に私通って大丈夫なの?」
再度シェアトが悠宇に向かって確認する。
「いや――命の保証は――何とも」
しかし悠宇もどうなるのかは全くわからないため、シェアトにこちらに来るようには強くは言えていなかった。
「とりあえずシェアト手か足からとかは?」
「海楓もあっさり言うけど、それで私の手足なくなったらどうするの!?」
「――意外とシェアトって――怖がり?」
一方海楓は意外にも大丈夫でしょ。といった感じでシェアトに話しかけていたが。シェアトは海楓の声では動かなかった。
「まあ、さすがにこのわからない空間?は怖いだろうな」
「まあ確かに――それはそうですかね」
シェアトと海楓のやり取りを見つつ悠宇がつぶやくと、それにちかも同意した。そして特に急いでいるわけではなく。無理にシェアトが通る必要もないのでとりあえずシェアトのことは海楓に任せて食料などをこちらでも準備してあげようか――などと思っていると。
「じゃあさあ。勇気を出して通れたら。悠宇が何でも言うこと聞いてくれるとかは?」
唐突に海楓の口から悠宇の名前が出たため。行動内容を変更した。
「いきなり海楓はおかしなこと言わないように。というか。お静かに。ちょっと黙ってろ。なんか海楓が余計なことをやらかす未来しかまた見えなかったから」
「えー」
「――その海楓の意見もらったー!」
「へっ?」
一瞬海楓の方を見ていた悠宇。すると次の瞬間自分の身体に軽い衝撃が襲う。
――ぼふっ。
悠宇の鼻にほんのりと良い花の?香りが――と、言うのを認識すると同時に悠宇は自分の胸に飛び込んできたものを再確認した。
「うん!?えっ?どういう状況?」
「――あれ?何もない?生きてる?なんだー。何もないじゃん」
「ちょ、シェアト!?何してるの!」
悠宇の胸に飛び込んできたのはシェアト。
実はちょっとだけ明らかに別空間というところに行くのが怖かったシェアトだが。通れた今はそんなことはもう忘れ。ニコニコとしている。
そんなシェアトの行動に慌てているのはちかである。悠宇に抱き着いたシェアトを引き剝がそうと早速シェアトの腕を掴んでいる。
なお悠宇に関しては――一瞬の出来事で何が起こったのか理解するのに少し時間がかかっていた。
「おお、悠宇が女の子と抱き合ってる――って、それは今までもよくちかちゃんともしてることか――私も混ざった方がいい?」
「してな――くはないですけど!」
「おっ、やっぱり悠宇とちかが婚約者?」
「まだ違います!って、シェアト離れる」
「「まだ。だって!」」
すると、ちかの反応をしっかり聞いた海楓とシェアトが声を合わせ。そして顔を見合わせて何やら楽しそうに笑い出した。
失言をしたことにすぐ気が付いたちかはというと耳まで顔真っ赤だ。
「ちょ、今のなし!って、悠宇先輩聞かなくていいです!」
「――もろ聞いていたが――というか、シェアトいつまでこうしてるんだよ」
ちなみに悠宇は特に何も動揺などなく。それより今自分に抱き着いているシェアトの方をどうにかしたい状況だった。
いつものようにちかが抱き付いているのとは全く違う状況だからだ。悠宇としてはちかとくっついているのはいつもの事。ちなみに海楓が抱き付くということは――なくはないが。こちらに関しても昔からというのがあるためあまり悠宇は気にしてはいないが。でもその2人意外となると。どうしていいかわからない状況だった。シェアトに触れていいものなのかすらわからず。まるで痴漢対策で両手をあげているような状況に悠宇はなっていた。
「やっぱりちかは悠宇好きと」
「うるさいです」
「まあ私は見た瞬間わかったけど」
「シェアトも黙るー」
「「かわいい!」」
「わーわー」
「ってか、ちか。私の国なら別に何人と結婚していいから。私悠宇と婚約したけどいつでも悠宇貸すから」
「なんで婚約で話進んでるんですか!?ちょっと悠宇先輩!」
「まあまあ。ちかちゃん」
「海楓先輩黙るです。ここ重要な場面です!」
「おお、ちかちゃん必死――って、悠宇は痴漢対策?」
「正解」
「とにかくシェアトは離れる」
「いいじゃん。初めて男の人に自分から抱き付いたけどこれ――いいねー。毎日したい。いやしだね。いやし」
「ダ・メ・です!」
「ふふっ、悠宇の事なのにちかちゃんが気が付けば仕切ってる」
「海楓先輩黙る!」
「はいはーい」
「はいは、1回です!」
「――なあ、とりあえず、狭い俺の家の裏口前でわーきゃーするのやめない?」
「まあまあ悠宇。ハーレム楽しみなよ」
「マジで海楓も楽しんでるな」
「悠宇を主人公に仕上げるためにはね。いい感じじゃん」
「はぁ……変な事しないでくれないかね。っていろいろ確認しないといけない気がするんだが――こんなことしていていいのか」
「まあまあ時間はあるって――今何時だっけ?」
両手をあげたままの悠宇の前では、その後しばらく女性陣が盛り上がっていたため――悠宇の両手上げはしばらく続くことになるのだった。
ちなみに主にちかとシェアトが話していたため。悠宇はちょくちょく海楓にいじられつつ。返事をするという時間となったのだった。
そして、海楓が時間を気にすると、それにちかも反応することになり。悠宇の家の裏口前でのわーきゃーは一時休戦となるのだった。
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