第78話 裏切りは近くに――

「うん――?うんん!?」


 何故かレバーを触った後。取り乱すではないが。自分の予想と違ったのか、わたわたしているシェアト。

 そんな様子を見ていた悠宇はとあることに気が付いた。

 何に気が付いたかというと先ほどからどうも1人だけ今の状況を楽しんでいるであろう態度のお方の存在だ。


「――なあ海楓。お前――なんかシェアトに吹き込んだな?」

「えっ、海楓先輩そんな事を――?」


 悠宇が先ほどから静かな海楓の方を見て確認すると、ちかも『まさか』という表情をしつつ海楓を見た。そして2人に見られた海楓はというと。


「そんなことしないよ」「海楓ーなんも起こらないじゃん」


 何食わぬ顔で返事をしたのだが――。

 海楓が答えると同時にシェアトが海楓に声をかけた。

 それは答え合わせのようなものだった。


「……」

「海楓先輩――」

「あははー」


 呆れる悠宇とちか。そして『ちょっと失敗したー』という表情の海楓。


「ねえねえレバー触ったら別世界じゃなかったの?騙したの?」


 変な空気になっていた3人のところにシェアトもやって来る。

 そしてシェアトの様子を見るにこれはもう海楓がいろいろ話したのでは?と、思った悠宇はそもそも隠すのは難しいだろうとも思っていたのでそのまま話し出した。


「はぁ。とりあえず、シェアトが先ほどつぶやいていたつぶやきは全部海楓の入れ知恵と」

「えっと――じゃあシェアトは単に聞いていたことを話していただけ?」

「うん。でも何かあるとは思ってたけど――」


 ちかの問いに即答するシェアト。その表情からは、隠し事せずにとっとと話せという雰囲気もあった。


「――海楓。お前な」


 そんな様子を見ていた悠宇が海楓の方を見る。

 なお、海楓の方は特に悪気なしといういつも通りの学校以外バージョンの海楓だった。


「いやだって――悠宇も隠せるとは思ってなかったでしょ?」

「――それはそうだが。にしてもだな。なんでシェアトが推理したみたいというか」

「それはなんかシェアトがそんな事していると面白そうだなーって思って。そしたらシェアト意外とノリノリだったし」


 なお、シェアトはシェアトで、まさか海楓がそんなことを思っているとは思いもしなかったらしく。


「海楓!?そんな事思いながら私に話してくれたの!?って、海楓のことは後で、悠宇。ほんとに悠宇たちはどこの誰?」


 さすがにシェアトも海楓に突っ込んでいたが。今はそれどころではないためシェアトが悠宇の近くへと迫る。

 迫られた悠宇は両手をあげ。降参のアピールをしつつ話し出した。


「あー、なんかもうぐちゃぐちゃというか。主に海楓がひっかきまわしている気がするが――はい。こうなったら見てもらおう」

「うん?見る?」


 悠宇が立ち上がると、シェアトが一歩下がり。道を開ける。


「海楓がどこまで話したか知らないが。とりあえずだ。俺たちは――」


 シェアトの前を通過して、悠宇が駅員室のドアを開けると――。


「――えっ!?どうなってるの?魔法――?ってどこ!?あれ!?窓から見えている部屋じゃないの!?」


 さすがにドアを開けたら別の場所が見えるのは予想害だったらしく。というか。海楓そこまでは言ってなかったのか。などと悠宇は思いつつもここで話を止めてもなのでそのまま話を続けた。


「何故かはわからないけど、俺の家とこの駅が繋がってる。そしてこの先は――なんというか。日本という国だ」

「――にほん?2本?」

「――なんか違うことを思っている気がするが――とりあえずって、シェアトはここを通過できるのか?」


 ドアを開けたまではいいが。この先にシェアトが通れる保証はないことに今更気が付いた悠宇だったが。ドアの向こうが気になったのだろう。シェアトが驚きながらも悠宇に近寄り。そのままドアを通過するまでは行かなかったが中を覗く。


「――うんん?ここは――狭い。なんかどっかの狭い――部屋?」


 そして見た光景の感想を素直に述べたのだった。


「「だよねー」」

「――狭いのはほっとけ」


 再度となるが。というか忘れられていたかもしれないが悠宇の家は鉄道模型のレイアウトが占拠していると言ってもよい。

 そして今は裏口から入るような状況なのだが。そこももちろん占拠されていると言ってもよく。シェアトの視線の先にも鉄道模型のレイアウトがある。つまりは――狭い部屋を今シェアトは見ている。

 もちろんだが悠宇の家を知っている海楓とちかはシェアトの感想に同意しながら頷くのだった。


「ってか。なんというか――どういう仕掛け?」


 ちらっと悠宇の部屋。悠宇たちの世界を見たシェアトは入り込むはまだせず。悠宇の方をまずは見た。どうやら入っていい場所なのかはわからず躊躇しているような様子だった。


「いや、仕掛けと言われても」

「私たちも知らないんだよね」


 悠宇がどうやって答えようか悩んでいると、海楓が会話に入って来て、ちかも近くにやって来た。


「まあとりあえず言えることは、このドアの先が私たちの住んでいる場所ってこと」

「この狭い場所が?悠宇たちの――本当の居場所?」

「シェアトそこは俺の家だから。外はちゃんと広いから」

「ふーん。って、ここ――私入っていいの?いろいろあって忘れているかもだけど、私の能力。精霊が――全く反応しないというか。なんか嫌な予感は感じるんだけど――」

「「「さあ?」」」

「ちょっと、3人ともわからないの!?」


 シェアトの問いに答えられない悠宇たちは同じように首を傾げたのだった。

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