第81話 何時?2

「あれ?ちょっと待ってこれは――まだ私たちが悠宇先輩の家に来てから――1時間も経ってない?」

「ほんとですね。って、そういえば前の時も時間が経っていなかったような――?」


 現在は悠宇の家へと戻って来たところ。そして、ふと時間を確認した海楓につられるようにちかも確認をしたところだ。


「――マジだ。結構経っているはずなんだが――やっぱり時間の流れがおかしい?って、それだとマジで俺たちの身体大丈夫か――?なんだが……」


 結局シェアトに抱き着かれたままの悠宇自身も気を紛らわすためにも時間を確認した。


「えっと――私たちが悠宇の家を出発して1日経っているなら24時間後くらいにちょうど戻って来たことになるけど……」

「さすがにそんなには向こうで時間過ぎていないと思います。ってか、ほぼ私たちが出発した時間のような――?」

「俺もちかの意見に同意。そもそもオールしていたらもっと眠いだろうし」

「確かに。ってことは――やっぱり時間の流れがおかしい?」

「多分おかしいな。ざっくり言って半日以上は俺たち向こうで過ごしていたはずだが。実際は数十分くらいか」

「つまり――向こうで1日がこっちでは1時間くらい?もっと短い?」

「その可能性が高いな。1日24時間って常識がおかしくなりそうだ」

「だね。これは――不思議だね」

「ああ」

「ほんとですね」

「ちょっとちょっと、私はどうしたらいい?」


 悠宇と、海楓、ちかがそれぞれ時間のことに関して話していると、新しい声が悠宇の足元から聞こえてくる。


「とりあえずシェアトは離れてほしいな。いつまでこの状態なんだよ」

「あっ、そうですよ。シェアト離れる。悠宇先輩から離れる」


 存在を忘れられそうになっていたシェアトが自ら存在を主張したことにより。無事に悠宇たちの会話に混ざるシェアト。

 そしてシェアトはちかに再度強く言われたため渋々といった感じでやっと悠宇から離れた。


「で、悠宇。この――なんかボロボロのこれは何?」


 悠宇から離れたシェアトは目の前の光景。一部しか見えていないが悲惨な状況のままの鉄道模型を指さした。


「あー、それは何というか。まあいろいろ」

「いろいろって――って、これ――町?にしては小さいわよね?立体の――地図?にしてもボロボロね」

 

 シェアトが悠宇の答えに少し呆れつつも鉄道模型の周りを歩き出す。どうやらシェアトは悠宇の家というより目の前の鉄道模型に興味がいったようだ。というか、悠宇の家はほとんどが鉄道模型。鉄道模型に興味がいかない方がおかしいが――。


「っか、シェアトが普通にこの場に居るの大丈夫なのか?」

「大丈夫でしょ」

「大丈夫じゃないの?」


 悠宇の問いにシェアトと海楓が軽く答える。


「シェアトと海楓の考えは似ているというか――軽いな」

「ってか。悠宇。これ何よ」

「いや、何と言われても――模型だな」

「模型?」

「手作りの――世界?」

「手作り!?悠宇は世界作れるわけ?」

「――なんか違うな」

「ふふっ。悠宇が世界を作った神様だったのかー」

「海楓変な方向に話を持って行くな」

「まあまあ」

「まあまあじゃない」

「えっ、悠宇本当にこれは――」

「なんといえばいいのか。模型――がわからないのなら――えっと、わからん。海楓説明を」

「なんで丸投げよ。って、おもちゃでよくない?遊ぶためなんだし」

「すごい壮大なおもちゃが悠宇の家にはあるのね」

「――模型をおもちゃでまとめて――いいのか……?あれ?でも確かにおもちゃか」

「――あれ?時間の流れがおかしいということは――あれ?シェアトがこっちに居ると――?」


 悠宇たちが模型のことを話していると。ふと、ちかが何かに気が付きつぶやいたのだが――それとほぼ同時に海楓がとあることに気が付いた。


「あれ?悠宇。ここなんか直ってない?」

「うん?」

「ここ、ここ」


 コントローラーの前のところの移動していた海楓が模型を指さしている。

 そして海楓が何を言っているか。悠宇はすぐに分かった。というか、向こうの世界でいろいろあったので、少し忘れていたが。それは悠宇も気が付いていたことだった。


「あー、そうそう、行く時に気が付いていたんだが。なんか向こうの世界で線路?作るとこっちが綺麗になるというか。修復されてるっぽい」

「どういうことですか?」


 悠宇が話ながら海楓のところへと行くと、意味が分からなかったらしいちかも付いてきた。


「ちょちょ、また私放置されてない?悠宇ー」


 そんな2人を追いかけるようにシェアトも移動した。


 ちなみに、今ちかが大変重要なこと。大事なことをふと思ったのだが――残念ながらそのことはちか本人が模型の方に気を取られたため。その後話題になることはなかった。

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