第61話 子2 ★
暗く狭い通路をカツカツとオニトが歩く音が響いている。
「なんでこんなところに隠し部屋作るかねー。なんもいないし。何の反応もないが――決して俺は怖くないー怖くないー。メアの方が怒ったら怖いー。って、怖い怖い適当に言っていたら俺が怖がりと思われるじゃねーか。今からこの地の英雄になるんだからな。って、なんもねえな。一本道で俺の剣の見せ場もないじゃないか。何でもできるアピールできるのによ。って、誰も見てないから意味ないけどな」
ぶつぶつと人1人くらいが通れる地下通路を歩いているオニト。
石を積んで作ったような地下への道。少しバランスが崩れたらすべてが崩れそうなところ。でも現状崩れてはいない。何とも奇跡的なバランスを保ってるようなところだった。
なお、オニトの能力ならもし崩れてきたとしてもかすり傷すらつかないが。
「俺は何をしてるんだか。まあこれで魔王たちのお宝でも何かあれば良い土産になるんだがな。せっかくならなんかねーのかよ」
その後もぶつぶつとオニトが独り言をつぶやきながら奥へと進んでいくと。しばらくして少し広めの区間が現れた。
石を積んで作ったような今までの通路を同じ作りなので、この場所も安全なのかはわからないが。今のところひび割れがあるとか。崩れたところがあるということはなかった。なかったが。それはそれでオニトを悩ませることとなった。
ちなみにその空間には特に何か仕掛けがあるわけでもなく。唯一あるのは正面のドアのみだった。
「なんで俺がドンパチしたのにこの場所は全く崩れてないんだよ。これ無傷だろうが?俺以上の防御をこの石を積んだだけの空間が持っているって?まさか」
少し上の地上では、地面に大きく穴が開いたりとしていたので、本来ならここまでの通路。そしてこのように少し空間になっているところは少しくらいは崩れていてもおかしくない。
しかし、オニトが周りを確認し。パット見は突貫工事で作ったような雰囲気なのにどこもこの少し広くなった空間は崩れた様子が全くなかった。
「俺の威力と同等の防御がこの場所にはあるって?まるで魔王の間と同じじゃ――」
あれこれとオニトは考え。まさか。ということも考えたのだが――。
「いやいやいやいやいや。魔王はぶっ飛ばした。その瞬間も俺ははっきり見たし。あの時は他の奴らも見ていた。というか俺の強さを見せた場所だし。生きているはずがない。あそこから復活は絶対無理だ。それにそのあと魔王と関係があった奴らもみんなぶっ飛ばして、悪は成敗したはずだ。そもそもこのあたりでは魔族の反応はもうない」
もうなんでもありとと言った方が早いが。オニトの能力はいろいろあり。もし誰かが隠れていても数百メートル圏内なら把握は可能。しかし今オニトが魔族を検知しようとしてもこのあたりにはもう反応は一切ない。つまり魔族は1人もいないということだ。
「――なんかがたまたま残っていただけか?ってことで、まあこのドア開けて何もなかったら内側からこの空間ぶっ壊しておけばいいよな?」
あたりを見終えたオニトは一番初めから視線には入っていたドアを見た。
特に何かこだわった様子のない普通の木製のドア。しかし、かなり強力な防御の魔法が張り巡らされており。凡人では開けられない様子のドアだ。もしオニトに付いていていた仲間がこの場に居たらその場合誰も開けることができないと騒ぎになっただろう。
しかしここに居るのはオニト。何でもありの男であり。先ほどから散策をしても特に何も敵は出ないし。物もないしということで、さくっと強力な防御の魔法は解除――いや、何もせずに単に手を伸ばし防御を破壊。そのままドアノブを回しただけのように見えたが――とにかくオニトにはこんな守り朝飯前である。
ガチャ。
「何が出るかな。何が出るかな――できればお宝が……うん?」
余裕こいてご機嫌にオニトがドアをけるとまた小部屋が現れた。
しかし今オニトが歩いてきたところと、ドアあった場所とは雰囲気が全く違う小部屋だった。なんせその部屋は地下とは思えぬほど綺麗な状態だったからだ。しかし特に誰かが生活している雰囲気は感じられない。感じられないのだが――部屋の中心にあったものが予想外すぎて、さすがにオニトのご機嫌だった口も開くのをやめたのだった。
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