第60話 子 ★

 漆黒の蒸気機関車に乗り魔王の残党退治へと出たオニトとその一行は、圧倒的力で残党を殲滅することに成功していた。 


「予想通りだが。余裕だったなー。面白くもないな」


 オニトの目の前では城の大半が崩壊した状態の魔王城がある。

 この場所はもともと以前オニトが来た際に半壊状態にしていたのだが。最近になり、その後生き残った者が復讐を計画していることが発覚。今回はその生き残りを殲滅しにオニトはやって来ていた。

 そして、決着はそれはそれはあっという間についた。

 圧倒的力を持っているオニトとその仲間により。皆のお腹が空く前に事は綺麗に片付いたのだった。


「さてと。さすがにもう誰もいないだろうが――またなんかされたらこうして俺がメアに文句を言われつつも来ないといけないからな。完全に消してくか。で、また後日。平和な世の中が出来たら――ここに町でも作ると。このあたりはどうするかね。娯楽施設でも作るか?いいな。女の子いっぱいの娯楽施設――それだと風俗か?いや、女の子がいる。それは娯楽施設だな」


 現在のオニトは1人で立っている。

 すでにともに戦ってくれた仲間は町へと返した後だ。

 仲間を送り届けたあと、確認のためにオニトは1人で半壊した魔王城の前にまた戻って来たのである。


「にしても、あの機関車あるとやっぱり便利だわー」


 独り言を言っているオニトは後ろを見た。

 そこには漆黒の蒸気機関車が止まっている。いや、正確には魔石を利用して動くため魔術特急。魔法特急などと言った方がいのだろうが。オニトは見た目から自分が好きな蒸気機関車として見ていた。


 もともとこの地は主要都市と都市が線路で繋がってた。

 しかしここ最近は車両の維持管理が難しいのと。燃料が一部地域でしか手に入らないことで、線路はあるが。鉄道が普及していない地域が多々あった。

 オニトも車両がなかったときはのんびりと馬車移動などを長距離でもしていたが。今は蒸気機関車を得た。それも自分専用のである。

 そしてその便利さを改めて知ったオニトはと言うと――。


「そうだ!これを片付けたら。今度は工業都市でも行って車両を作らせるとしよう。そして魔石はなんとかなりそうだったから。魔石燃料ってことで、全部動かすように作らせれば魔石切れ……ってことはないだろうが。基本当面は使える。そうすればもっと交流が盛んになる。うんうん。いいないいじゃないか。これは楽しくなりそうだな。そうと決まりゃ。とっととこんな魔族のことは片付けて――そのあとは今ある線路を利用しつつ。国中の隅々まで線路を繋げば。さらに俺の知名度はアップ。能力使わずともどんどん事が進んでいく。うんうん。良いじゃないか良いじゃないか。やっぱり線路は繋げば繋がりの宝じゃ。よし!悪なんてさくっとぶっ飛ばし殲滅。俺の国を作るぞ!おぉ!!」


 1人で語り1人でこぶしをあげるオニト。その姿を見た者はいないが――オニト自身はノリノリであった。

 そのあともいろいろ1人で語るオニトはそのあと自身の能力。完全にチート能力を他に人が居ないため発動する準備に入る。


「歴史改変は余裕だが――他も試さないとな。今後はなるべく使わなくていいようにしたいが。まあ今はいろいろ試しておかないとだし。町では試せんからな。もしもがあるかもしれんし。不具合とか勘弁だしな。あと誰かにばれてもだしよ――よし。とりあえず考えろ。攻撃魔法――ダイナマイトみたいに一発ドカンって能力も手に入れば――今日みたいに仲間を連れてくる必要もなくなる――できる。できるぞ。俺」


 その後オニトはぶつぶつと何度も失敗し。自分の手前でばかり小さな火を起こしていたが――。


「――キタぁぁぁぁ!」


 突然オニトが叫ぶと同時に半壊していた魔王城が光に包まれ――きゅっと光が小さくなると同時にあたり一面に爆音。風圧と地響きが発生した。


 ドゴーーーーン。


 直下型地震のような大きな揺れがオニトの居る周辺を襲う。それと同時に半壊だった魔王城が大爆発。大型の爆弾でも落とされたかのように起きなキノコ雲を作り。大量の砂があたり一面に広がり一時的にオニトの周りは何も見えなくなった。

 砂埃が晴れると、そこにはにやりとした表情のオニトだけが立っていた。


「――俺やべーー。いやーマジか。さすが俺。もうなんでもできるじゃん。敵居たらぶっ飛ばせるじゃん。さすが――俺!」


 1人でオニトは歓喜する。

 さらに何度か何もないが感覚を掴むために魔王城があった近くの地面を爆破してみる。


 ドゴーーーーン。 

 ドゴーーーーン。


 まるで子供のようにはしゃぎように地面を爆破するオニト。

 周りに誰もいないためやりたい放題である。

 あちらこちらで大小のキノコ雲が発生。視界が悪くなっていた。


 しばらくすると、魔王城周辺が穴だらけになり。さすがにもう誰も残っていないだろうとオニトは思いつつも。自分の力を再確認するために魔王城へと近寄り。あたりを歩いた。

 もちろん連続して爆破のようなことをしたため。もう瓦礫もほとんど粉々。一部では何もしていないのに更地が出来ているようなところもあった。これならこの後何か作るにも便利。といった状態だ。

 さすがにこれだけ一方的にドンパチをすれば、オニトと同等のレベル。または魔王レベルの防御が出来なければ跡形も残らないだろうとオニト自身も思っていたので、ざっくりと周りを見て帰ることにした。


「やべー、やりすぎたか?いや、でも今後ここを更地にすると考えると――変なものは残ってない方がいいか。俺良いことし――うん?なんだこりゃ?」


 今後のことを考えながらオニトが歩き。そしてそろそろ少し離れたところにある線路に止めている蒸気機関車のところに戻ろうとした時だった。


「――マジか」


 魔王城から少し離れた場所の林の中。もちろんここも先ほどのオニトの攻撃により木々がなぎ倒されている。

 そんな場所でオニトは少し崩れかけているが。まだ入り口がはっきりとある地下へと階段を見つけたのだった。


「おいおい確かここの魔王城に地下があるとか聞いてないぞ?って、俺が乗り込んで全部前見てからぶっ壊したはずだ。つまり――ここは隠し通路か?あいつらまだこんなものまでまだ作っていたかよ。こりゃ、ちょっと一応生き残りが居ないか見てきた方がいいか。またこれで取り逃していたら同じことが起こって――メアとイチャイチャ過ごせねえじゃないか」


 少し面倒な表情をオニトはしつつも。一応鞘に入れていた剣を手に持ち。明かりも準備し腰にかけると、崩れかけの地下への階段へと歩き出したのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る