エクレクティック レイアウト レールウェイ ~爺ちゃんから相続した遺産【鉄道模型】によって、俺は何故か別世界で鉄路復興をすることになった話~

くすのきさくら

第1話 英雄 ★

 ヒメルヴアールハイト。


 それはとある場所にある国の名前。

 遠い昔。隣国からいろいろとやらかしたのち。この何もなかった土地に逃げ出してきたと言われている男。のちにヒメルヴアールハイトの国王になった男が付けた名前と言い伝えられている。

 正しいことなのかは、文献などが残っているわけではないのでわからないが。多くの人はそのように先祖から聞いてきている。

 そして今でもその土地はヒメルヴアールハイトと言われている。

 なお、すでにその当時の元国王の名を知ってるものは――いないだろう。もしかしたらいるかもしれないが。多くはないだろう。

 なんせ相当の月日。年月が経っているのだから。

 今この地で生きる者の多くは自分の住んでいる場所の名前の意味すら知らないかもしれない。

 そもそも以前のこの地は常に気味の悪い雲。まるで異空間にでも繋がっていそうな。雷雲。嵐のような雲が常に広がっていた。

 地上の空気も何とも言えない重い空気に覆われていることが多く。昼間でも太陽の光が届くことがほぼなかった。

 そのため草木のほとんどが枯れてしまっているのが当たり前のような状況で、時たま明らかに毒草――と、思われるようなものが生えているだけだった。毒草だったのか詳細は不明。

 もちろんこの気味の悪い雲。空気はその時その場で生きていた生き物すべてに対しても明らかな悪影響を及ぼしており。この地に居る者は何らかの病を患っていることが多かった。

 できることなら住みたくない土地――とにもかくも何とも怪しい。とってもとっても嫌な雰囲気が常に漂よう場所。

 それがヒメルヴアールハイトという土地。


 ちなみにこの地。ヒメルヴアールハイトは始めからこのような怪しげな空気のある土地ではなかった。

 はっきり言って。元凶である元国王の男がこの地へと来たときは、一面が鮮やかな緑。自然豊かな未開の地だった。

 少ないながらも作物もちゃんと育つ環境だった。

 人、生き物が暮していくことができる土地だった――土地だったのだが。その環境は長くは続かなかった。

 

 この地に何が起こったのか。

 

 少し過去の話をすると、元国王の男がこの地に来て、ヒメルヴアールハイトといという小さな国を作った。

 その後は隣国との戦いなども経験したこの地は最終的に――元国王を失った。

 元国王が何かやらかした――と、思った方。当たり。と、言えばあたりなのだが――実は元凶は2人居た。

 国王ともう1人。そしてそのもう1人が一番の元凶だったりする。そのもう1人は元国王の男に寵愛を受けた女性だった。

 今の時代には名は残っていないが。元国王を失った後。元国王に寵愛を受けていた女性はに、その後この地を受け継ぎ。

 自らの実験のために、常日頃からいろいろなモノを混ぜ。混ぜ。混ぜ――ぐちゃぐちゃに混ぜ。最終的にはこのヒメルヴアールハイトという元国王が作った国を混沌とした地にしたのだった。

 このもと国王と寵愛を受けた女性の人生はそれはそれは話し出せば長い長い話になるが。今は既に過去のこと。

 この2人の人生はまた別の話。

 とにもかくも、昔ふざけた人が居て、なんやかんやとやってしまったが故に、ヒメルヴアールハイトが混沌とした土地となったということだけ話しておこう。


 この土地の気味の悪い雲や何とも重たい空気に覆われている原因は、人によって生まれたのである。


 もちろんだが今では、元国王の男に寵愛を受けていた女性もこの世を去った。

 自分の思うがままにこの地を使い。もう自然の力だけでは元の姿にには絶対に戻すことができない状態にこの地をしたまま……。


 ◆


 それからまた長い長い年月が経った。

 しかしヒメルヴアールハイトには緑が全く戻っていなかった。

 もちろんあたり一面どんより重たい空気のまま。草木はすでに姿すらなかった。毒草――らしきものすら必死に探さなければ見つからないような状況だった。

 上を見上げても何とも気味の悪い雲が広がっており。青空はちらりとも見えていない。

 そのため何年と時が過ぎようと、この地を好んで来る人も生き物すらもいなかった。

 ある意味有名なこの地の名前が忘れられることはないだろうが。でもこのまま手付かずの時期が長く続き。そして消えていくだろうと誰もが思っていたある時のことだった。


『――ふっははははっ。俺に――全部任せとけぇぇぇぇー!!やったるぞぉー!!』


 混沌とした大地に、鍛え上げられた身体を破れた服の隙間から見せつつ。長い白髪の前髪(前髪しか髪がなく。あとはツルツル)を揺らし。燃えるようなオーラを全身から溢れさせている男の声が混沌としていた大地に響いた。

 ちなみに少し白い歯を見せてポーズしているが。特に周りには誰もいない。無意味なことをしている。

 それはさておき。

 この1人で叫んでいるこちらも怪しい――見るからに怪しい男は、この世界にやって来た。

 現れた。と、のちに言い伝えられる男。

 唐突にこの世界に現れ。なんの能力もない無能とはじめは周りから言われつつも。気が付けば次々と人を。国をもまとめ。最終的にはこの世界ほぼ全体をまとめていった男だったりするが。

 はっきり言ってて、変質者――と、言われてもおかしくない状況だったりする。いや、変質者が現れた。


 どうしてそんな男が人を国をまとめて行けたのかは謎であるが。不思議なことにこの男が立ち寄った国では姿市民たちもが男を新しいリーダー。中には王とまで言い始めるという不思議なことが起こっていたりする。

 ――まるでこの男がかのように。

 しかし、そんな不思議な光景に気が付くものは誰一人としていなかった。なので、この時のこの世界はこの男の思うがまま事が進んでいた。


 ちなみにこの時の男がまとめ上げた世界は多くの地で、大変豊かな生活。そして市民の笑顔が溢れていた言われている。

 一部ではこの男性のことを英雄と言い伝えているところが未だに残っているくらいだ。

 まあ何故この変質者みたいな男がここまでのことをできたのかは未だに謎となっているが――。

 

 とにもかくもそんな謎多き男は、最後の総仕上げとして、この世界で最も混沌としており。人を生き物をを寄せ付けることのなかったこの地。ヒメルヴアールハイトを訪れ。この地を自分の余勢を過ごす場(基本大好きな女の子とイチャイチャ過ごすための隠れ家的なところ)。として生まれ変わらせたのだった。


 この地には変な人しか来ないと思ったそこのあなた。

 ホントにそのとおりである。


 ちなみにその変質者が生まれ変わらせたとあるが、それは一瞬で、である。

 もうなんでもありな変質者だった。

 もちろん。そのことに気が付いた者は、この時の世界には1人も居なかった。

 その後の未来でも学者がいくらこの地の成り立ちを調べようにも未だに解明されていない事だったりする。

 1人の変質――変質者変質者はかわいそうなので、男にしておくか。男が一瞬で、元国王。遠い昔に人によって壊れた土地を元に戻したなどと思うものはいないからだ。


 とまあ誰も信じることがないが。本当に一瞬で混沌としており。長年誰も住めないような状況。住んでも病に悩まされる混沌とした地。ヒメルヴアールハイトは生まれ変わった。

 

『この世界――――全部俺のものだー!!ひゃっほぉーい!!』


 ちなみに変質者が叫んでいたことは未来には――多分受け継がれていない。

 というかこのヒメルヴアールハイトという地は、本当に変な人しか集まらないのであった。

 それはこの先でも――。


 

 それから数十年。変質――失礼。男は、すべてをまとめ。平和な世界が続いたとされている。

 そしてそんな日々を作り出した男の名は、英雄。

 晩年はヒメルヴアールハイトで過ごし。自分のまとめ上げた世界を見ていたとされる。そして――静かに最後の時を――と、思いきや。


 何度でも言う。

 ヒメルヴアールハイトは変な人しかいないのだ。


『――そろそろ、現実にも戻りたいなー。多分今戻ってもまだ数十年は向こうでも生きれるだろうしなぁー。よーし。みんな待ってろ。跡継ぎ探してくるからな!!じゃっ!!』


 英雄オトウは、周りの者にそのような言葉を残し忽然と姿を――いや、この世界から存在そのものを消したのだった。


 英雄の去った後の世界は、オトウの功績。力によってか。しばらくの間は平穏な日常が続いた。

 しかしある日突然。世界各地でと、のちに言われる大規模な自然災害(現状原因不明の天変地異)が発生したのだった。

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