第74話 4人に――
「えっとこれで操作するだけです。そしてこのハンドル前後にしか動かないので特に迷うことはないというか。どっちかに動かせば動くというか――」
「――本当に簡単なんですね。本当にこれ以外使わなくても動かせるのですか」
「です。びっくりなことにこんなに大きなものがこのハンドルだけで。そしてこれで進行方向を変えると先ほどのように後ろ向きでも――」
「ほへぇー。すごい。これだけシンプルだと誰でも簡単に機関車を動かすことができますね」
「だと思います。俺でもできましたから」
現在は杜若に帰って来てから少し時間が経ったところ。
若い女性陣はというとコールに失礼かもしれないが。現在若い女性陣。海楓。ちか、シェアトは駅舎の裏で休んでいる。
少し前にいろいろと話し合い?らしいことをした後。シェアトが空腹だったことを知った悠宇たちは一度食事にした。
そして食事の後は疲れがさすがに出たのか。駅舎裏で雑談をしつつ休憩をしていた海楓たちは皆うとうと――という状況になり。今である。
特に現状危険もないというコールの判断で、3人はそのまま休憩タイム。その間に悠宇とコールは機関車の運転席にて操作の確認をしていた。
ちなみに何故そんなことを悠宇とコールがしているかというと。コールが気になったから。興味を持ったからではなく。必要に迫られたためだ。
コールはこの後1人で実りの町へと戻ることが少し前の話し合いでほぼ確定した。
コールはシェアトといろいろ話し合いをしたが。やはり一度は戻った方が物資を得られる。などなどとシェアトに押し切られた。さらにそれと1つ試してみたい事。確認してほしいことが出来たからということも大きい。
それが何かというと食事をしている時に時を戻した方が良いだろう。
★
「ねえねえ悠宇」
コールが持ってきてくれた食事パンなど簡単な物を食べていると、シェアトが悠宇に話しかけてきたのがきっかけだ。
「はい?」
「悠宇の能力って見えないところでも効果があるのかしら?」
「えっと――どういうことで?」
「線路を作るのがよ。例えばよ。悠宇が想像。思うだけで良いというのなら。この場所に居ながらも線路を延ばすことができるんじゃないの?」
「えっと、さすがにそれは――やったことがないので何とも」
実はすでに自分が目視していなくても線路が出来ていたことを知っている悠宇は、なんとなくできそうな気がしたが。ここでイエスというのは――ということで、曖昧な返事にとどめた。
「なら試すわよ。悠宇の能力によっては大きく状況が変わるかもしれないんだから。コール。地図あるかしら?」
「簡単なもので良ければ」
「それ貸してちょうだい」
食べていたパンを隅にシェアトが置くとシェアトの前にコールが地図を広げた。
広げられた地図には大まかな都市の名前。町の名前というものが書かれていた。
「大きな――国?ですか」
ちかが少し興味あり気に地図を覗き込む。
「ええ、正確には3つの国――かしら。今私たちが居るのがこのあたりね」
ちかの質問に答えながら、シェアトが地図の右の端を指さす。
よく見るとその近くには『実りの町』と、読める文字と。その少し離れた右側に『ドーナツ国』という何やら名前からしておいしそうな名前が書かれている。
「杜若は書いてないんですね」
同じく地図を覗き込む海楓がシェアトに聞くとそれはコールが答えた。
「この地はすでに誰もいない土地で、ほとんどの人はすでに忘れているような土地ですので、杜若のように昔は人が住んでいた場所でも、今住んでいないと地図には載っていないことが多いです。もちろんこれが簡易的な地図というのも書かれていない理由ですが――ちゃんとした歴史書には杜若の文字はあったかと思います」
「なくなっちゃった町もあると――」
「そういうことです」
「でも、まさか杜若にこんな場所が残っているとはね。地図を作っている人もいい加減よ」
コールと、海楓が話していると、シェアトが口を挟み。そしてシェアトは悠宇の方に地図を向けた。
「で、悠宇に試してみてほしいことは、実りの町からドーナツ国へと線路を繋いでほしいのよ」
「ここをですか?」
地図の中の実りの町とドーナツ国と書かれている場所をなぞる悠宇。
「そうそう。この後コールが出発して、実りの町へと戻った時に新しい線路が出来ていたら悠宇の能力はどこでも使えるってことでしょ?あっ、すごく疲れるとかなら少しでいいから」
「いや、特に疲れとかはないんですが――」
「めっちゃ万能ね。ねえコール」
「はい。悠宇殿が居るだけである意味すごい戦力ですよ」
「ほんとよ。ってことで、悠宇。とりあえず繋げてみて。ちなみに――実りの町からここまでの――2倍、3倍?くらいの距離はあったかしら?」
「はい、そのくらいは離れていたかと。それもあって大炎上の後は完全に分断。情報が入らない状況ですのでちゃんと町があるのかは――ですが。多分あちらも大丈夫でしょう。この域はまだ被害が少ない方ですから。マナ域エーテル域の方が酷いはずですから」
「――あのー。あっさりとすごいことお願いしているのわかってます?」
いろいろと知らない言葉が飛び交う中。悠宇は混乱しつつも挙手をして、自分が通常ならとんでもないことを1人でするように言われていることに気が付き発言をした。
「わかってるわ」
「あっさりだなー」
「とりあえず悠宇。やってみて」
「あーはい」
それから悠宇は杜若から実りの町へと線路を繋いだように頭の中でイメージを――と、言ってもどんなところに線路ができるのか悠宇はわからない。もしかしたら断崖絶壁。または山の中などなど、現地の状況がわからないので、ざっくりと、実りの町からドーナツ国へと、いう感じでイメージをした。
「――何かしているようには見えないわね」
「はい」
「大丈夫大丈夫。これでも悠宇使えるから」
「おい、海楓。さっきから俺の扱い雑だよな?」
「いつものことでしょ?」
「はぁ」
悠宇のため息に周りからは笑いがこぼれたのだった。
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