第101話 得意 ◆
シェアトが悠宇たちと共に実りの町を離れ。一時杜若の地に避難することになった今。
実りの町を守っていたガクはというと――。
サクッ――サック――。
「ふー。やっぱり腰に来るのー」
長いグレーの長髪を軽く結び。服を着替え。鍬を持ち農作業を始めていた。そしてそんなガクを見つつ何人かの町の人も手伝いだしていた。
もともとガクは農作業が好きだった。
農作業好きの王。というとちょっと違和感もあるかもしれないが。ガクは子供のころは良く畑いじりをしていた過去がある。
しかし大人になり。この地に来るまでは農作業をするような時間はなかった。そのため自ら畑に出ることはなかったのだが。少し前にコールだけが戻って来た。どうやら杜若には十分な食料がないということで、食料を取りに来たのだ。そして町にあった食料を少しだがシェアトの元へと送った。
そこでガクは思いついた。
シェアトのために、この町の今後のため。もし自分たちが離れたともここで生活する人達の生活の助けになるかもしれない。そんなことを思いつきここで作物をたくさん作ろうと決心したのだった。
大炎上の後町を追われるようにガクたちは多くの町の人と共にここへと来た。そして今までは何が起こるかわからず。この地で元から住んでいた人たちとひっそりと過ごす日々だったが。悠宇たちが現れたことで風向きが変わりつつあった。
それに本当にどういう仕組みなのかはわからないが。この場に悠宇が居なくとも現在実りの町から新しい線路が着実に延びている。
もしこのまま延びればまずドーナツ国と再度つながることもできるだろう。その際に何もないではちょっと――だったので、この地にあるもの。広大な土地を使い作物を作ることにした。
「そういえばアクはどうした。こういう時こそ力自慢が出る時じゃないのか?」
ガクが一列耕してから周りを見渡しつつ声を出した。
するとガクの手伝いをしていた町の人が答えた。
「アクさんなら駅作りしてますよ」
「――あー、そういえばそんな事命令したな。じゃあベクはどうしたベクは」
「噂消しに奔走しているのかと」
「お前たちもシェアトのことはもう触れるなよ」
ガクは周りの人にそんなことを言った後、また畑を耕すことを再開した。
すぐには無理だが。順調に育てば定期的にいろいろな作物が取れるようになるはず。そんなことを思いつつ。町の人と畑を耕した。少しするとベクもそこに加わった。
そしてそれからしばらくした頃だった。予定していた作業が終わり。みんなで休憩――と、なった頃だった。
ヴォォォォォ!!
実りの町に、杜若の方からけたたましい警笛が聞こえて来たのだった。
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