第205話 無駄に時間を使う

 リンゴみたい――というだけで、とりあえず2人で見つけた実を焼いて食べてみた悠宇とちか。

 先に言っておくと特に何も起こることはないはずなのだが――何故か食べた2人は口を動かしつつ。顔を見合わせていた。

 もう一度言っておく。この2人の身体に何か起こるということはないのだが。この2人何故か顔を見合わせて、何も言わないため余計にもう1回説明。さらに1回説明しておく。

 普通に安全なものを食べたのだ。


「「……」」


 けれど顔を見合わせる2人。そして――まさかのまさか。そのまま意識を失った2人は二度と目を覚ますことはなかったのだった……。

 とか言うことにはもちろんならず。

 いや、何も起こることはない。と言っているのだから、スムーズにいってくれよ。と、思うかもしれないが。このサバイバル中の2人に何か言う者が今はいないため。2人の時間で事は進んでいくのだった。

 無駄に時間をかけているが。誰もそのことに関してとやかくいう者はいなかった。


「「美味しい!!」」


 そしてさらにしばらくしてそれぞれ数回口を動かした後。

 それぞれが感動したかのように声をあげた。

 

「ちょ、先輩これ小さいのに味しっかりしてますよ」

 

 ちかのテンションは一気に最高潮となった。


「だな。めっちゃ甘いな。っか焼いて正解だな。これうますぎるじゃん」


 悠宇のテンションも一気に上がった。

 つまりは――楽しそうな2人というのが現状である。


「あとジューシー?言いますか。ジュワっとしみてくる汁?がめっちゃ美味しいです」

「これ毒ではないだろ。大丈夫だろ。これで毒だったらこの世界信じれなくなるわ」

「ですね。今のところ問題なしですし。って、これ何個でもいけますね」


 ちかは次の実に手を出した。そしてそれに続くように悠宇も新しい実に手を伸ばすのだった。


「ああ。普通に上手い。あとなんか水分補給にもなっている気がする」

「ですよね。これすごいジュワっとですよね」


 自分たちで取って来た実に大満足の2人。その後も特に体調不良とかそういうは全くなく。むしろ2人を元気にしていた。

 完全にキャンプ?にでも来た2人である。


「――こういう食事いいですね」

「だな。なんか向こうの世界ではない事だよな」

「自分たちで探してですしね。ってかこれ――リンゴで良かったんですかね?誰かに聞くこともできず。わからないまま食べましたが」

「まあリンゴじゃないかな?小さかったけど見た目リンゴだし。味はかなり近かった気がするしな」

「ですね。って、食べたら眠くなってきました。美味しいもの食べるとなんか落ち着きますね」

「わかる。あとあったかいもの食べたからか。ほっこりしたよな」

「ですです」


 普通に実を食べた2人。というか少ないなりにも食事ができた2人は。そこそこお腹も満たされたというのと、ここまで歩いてきた疲れもあって少しうとうとし始めるのだった。

 あまりに順調なサバイバル?だからか。食べたら寝る。そんな流れになりそうになっている悠宇とちかだった。

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