第204話 全員が全員従っているわけではない2 §

 黒いマントの集団は急ぎ現在のアジト。ヒメルヴアールハイトにある城へと戻って来ていた。

 そして机の上に広げられていた地図を見ている。

 その地図は先ほど知らされた新たな情報が書き加えられており。バツ印。自分たちのものになった場所がまた減っていた。

 そのうち普通域のdsa国の情報は普通域の中でも遠方。中心地よりかなり離れた場所でまだ曖昧の為。とりあえずバツ印が消されただけ。

 しかしそれ以上に少し前まではもうすぐこの地図上すべてが自分たちのものになる直前までいっていたはずなのにマナ域のレオ帝国からほぼ全域の印が消えた。

 本来なら情報を得た。見た一部の町だけ印が消えるのだが。まだ報告が来ていないところからでも、あの城壁などを見る限り奪い返された可能性があるため。レオ帝国は奪い返されたとみることにして話をしていた。

 ちなみに室内は大変空気が重く。また居心地が悪かった。

 その理由はもちろんリーダーの不機嫌にある。


「つまりは――奪ったところがいつの間にか大きく奪い返されたと」

「は、はい。多くはないのですが――一部でです」


 リーダーらしき人に報告している人物はかなり怯えたような声で返事をしている。


「レオ帝国とdsa国が同じ時に動き出す――打ち合わせでもしたかのように。もちろん連絡網は絶っていたのでしょ?どうなっているの?」

「は、はい。それはもちろん。以前の移動手段。鉄道をすべて破壊し。町の機能の多くを破壊しているので、そう簡単に各地と連絡は不可能のはずです。特にdsa国に関しましては、エーテル域、マナ域と違い空気中の魔力が少ないので、生活するだけでも大変な状況になっているとの報告がありました。そもそもですがあの地域では、魔力など、能力を使いそのようなことができる者がほぼいないはずですので、他のところとのやり取りは他よりさらに難しいかと――また、能力があっても大したものがないのが普通域です。以前は王女が唯一強力な力を持っているという情報がありましたが。我々の侵略以降はdsa国は事実上分解。調査させた者からでは王女は死亡したという情報をあります。現にここ最近は目撃情報すら上がってきていません」

「まあそうだろうね。あの地域は弱すぎてあっという間に攻め落とすことができた場所。あの男もほとんど近寄っていなかった地域だからね。レオ帝国と手が組めるとは思わない――レオ帝国も昔ほどの力はないはずだから。わざわざ足手まといの場所に協力することも考えにくい――dsa国が何らかの大きな力を得てない限り――そんな報告はないわね?」

「あ、ありません」

「――そうよね。まあその情報が正しいのかはわからないけれど。でもそうね。あそこはあまりにあっさり過ぎて、国王やらがどうなったかは全くわからなかった場所。確かにそれは引っかかるところだけど――たとえ国王らが居たとしても大した脅威にはならない。けれどdsa国は今も何故か一応は国を維持している――我々があの普通域での生活が不便だから手を付けないのもあるが――ホント。あの男が作ったこの世界はおかしなことが多すぎる。何故あんな場所があるのか。あの男の力なら。普通域をこのあたりと同じにすることもできたはずなのに――ホントどうなっている。にしても、なら何故大したの能力のない集まりのdsa国で鉄道再建の情報が上がって来たのだ。うん?ちょっと待ちなさい。考えられるといえば――レオ帝国からの支援はほぼないのよね?」

「は、はい。レオ帝国からdsa国への支援ということは考えられませんし。そのような痕跡も一切ありません。痕跡を残さず――となると。それなりの力を持っていないと痕跡は残るでしょう。なので他に考えられるとすると――」

「あの男が生きていた――」


 報告をしていた男性が明らかにもう報告することがなく。この先なんと答えればいいのか。伝えればいいのか。必死に考えてる表情になると同時くらいにリーダーがつぶやいた。

 報告していた者はその言葉にもちろん反応した。そして、それに関してはデータがあったため。慌てて再度話し出した。

 

「えっ――あっ、いやでも、その可能性は――はい。ほぼないと報告が来ています。あの者の力は現れればすぐに感知できるようになっておりますから」

「――まあね。私もあれからは一切関知することが出来ていない――あの男が隠れている可能性は――まあなくはないけど。でもこれだけ姿を現さなくなったのだから。もういないと考えるのが普通。だから私たちがこの国を作り直している――」

「そうです」

「――私の知らない力がある可能性ね。とにかく調査させなさい。もしかするとあの男と同等が現れた可能性があると」

「わ、わかりました。調査準備を――」

「急がせろ。すぐにだ。もしあの男の関係者だと厄介だ」

「はっ。すぐに」


 リーダーに報告していた者とその他周りに居た数人の黒いマント姿の人が慌ただしく部屋を出て行った。


「――あと少しだったのに、何故ここにきて、まさかあの男の生まれ変わりが現れたとか――いや、そんなことはあるはずがないが。こちらももう一つ何か強力な力があれば、それこそこの残されたメモがわかれば――」

 

 1人部屋に残った黒いマントを付けた人影はそのあともしばらく机の上に残された地図を見ながらぶつぶつとつぶやくのだった。

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