第172話 恨む ◆
ぼやけた視界の先に見えるのは――見知らぬものばかり。
「……」
水の中に居る成人女性が意識を取り戻した。
ここはカプセルの中だが。カプセルの中という理解はできていなかった。とにかく身動きが取れない状況ということはわかっていた。
彼女は本来この世界に実体化することはない存在。
しかし今は自分の身体――と、思われるものがある。
少し前まで乱暴に扱われていたため。その身体と思われるものには生生しい傷が一部にはある。
そして不思議な空間に閉じ込められているらしく。出ることが出来な――。
と、成人女性が思った時だった。
急に身体が淡く光り出した。そして少しずつ身体が軽くなる気がした。それと同時に――助けの手が見えた気がした。
実際には誰の目にも見えぬ存在。しかし成人女性――の身体を持っていた精霊の女王にはその見えぬ存在を見ることができた。
「――」
「――」
そして誰の耳にも聞こえぬ。彼、彼女だけがわかるやり取りが行われ――スーッと成人女性の姿が消えていく。と思われたが。
「――」
急に助けの手を伸ばした彼の方に怒りの雰囲気が現れた。
もちろんもし誰かがこの現場に居合わせても、誰も理解することができないことが起こっている。
すると、助けの手を伸ばした彼の方は明らかに怒り淡く光り出していた彼女の身体を真っ二つにした。
もともと実体がない存在。すでにその身体が消えようとしていたこともあり。先ほどのように怪我。真っ二つにされたからと言って血が噴き出すということはなかったが。カプセル内には先ほどまで成人女性の姿をしていた――何か。の身体半分。胸から下が無造作に沈んだ。
無造作に身体が沈んでいく中。すでに室内。カプセル内には何もいない。先ほどまでこの場に居た気がする彼と彼女はもう跡形もない。
大雑把に言えば元の自分たちの場所へと帰ったのだ。
――帰ったのだが。
カプセル内にはまだ成人女性の身体が半分――しかし意思というものはないらしく。沈んでいる。
すると、カプセルが静かに動き出す。もともとどっかのわがままエロガキ転生者がおかしな力を使っていたこともあり。その力が完全に消えるまではカプセルが勝手に稼働していた。
そして誰もいない地下室。そして明らかにこの世界のものではないカプセル内は着実に変化をしていった。
ちなみにすでにわがままエロガキ転生者はこの世を去った。しかし影響力が大きかったため。まだカプセルは稼働していた。
それからカプセルは動き続けた。というか、大きな動きをしていたわけではない。もともと実体がないものを実体化させようとどっかのわがままエロガキ転生者が作った。つまり稼働が止まるその時まで作ったものの意思を勝手に引き継いでいた。
しかしすでにこの世に実体化しないものを作る術はない。
相手ももちろん対策をしたということだ。
しかし、どちらにとっても予想外のことは起こる。
カプセル内にはまだ成人女性の身体だったものがあった。
そしてどういうわけか。無駄にわがままエロガキ転生者がしっかりしたものを作ってしまったため――ゆっくり朽ちる成人女性の身体――から気が付けば小さな命が――。
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