第202話 毒見不要?

 甘い香りがしてきた丘の上。

 香りの理由は少し火であぶられたリンゴみたいな実だ。今は皮が焦げて、しぼむではないが。実の形が少し変わるくらいにやわらかくなってきていた。


「見た感じ――食えそうだな」


 現在食事中となる悠宇とちか。悠宇が焼いていた実を見つつつぶやく。


「です。普通においしそうな雰囲気です」


 そして同じく実を焼いていたちかも早く食べた。と言わんばかりの表情をしつつ。自分で焼いた実を見ている。


「まあとりあえず――俺食ってみるから。それで俺が死んだらちか。とりあえず頑張って町まで行ってくれ」

「いやいや、こういう時は一緒に食べましょう」


 おいしそうな香りはしている。しかしこの実は食べで安全かはわかっていない。そのため悠宇が毒見をしようとしたが。それはちかに止められた。


「それ――2人ともお陀仏の可能性出るぞ?ここだともしかすると誰も見つけてくれない可能性もあるぞ?線路から離れてるし」

「大丈夫です。先輩と一緒なら――問題なしです」

「いや――問題ありだと思うが」

「いいんです。1人では逝かせません。というかこれ美味しそうなんで問題ない気がしますが――」


 悠宇は毒見をし。もしもの時にはちかに何とか生き延びてほしいとか真面目に考えつつの提案だったが。この時のちかはというと。悠宇と一緒に死ねるなら全く問題ない。とか思っているのだった。

 ちなみに悠宇はちかは単にお腹が空いていて我慢の限界を実は超えていたか。などと思っているのだった。

 

「とりあえず、食べましょう」

「――だな。このままだと炭になるかもだし」


 そのため、悠宇はちかに空腹の我慢をさせるのも――というのと。まあなんかあったらなんかあっただ。と思うことにして、特にこの2人。大きな決意はすることなく。火から実を離した悠宇とちかはほとんど同じタイミングで少し食べてみるのだった。

 ――決意はしなかったが。この2人一口でいく度胸はなかったという。これは特に打ち合わせなく。2人ともが同時に同じくらいの小さな一口だった。

 まあこの時は毒云々の前に小さな一口で正解と言えば正解だったのだが――ね。


「「あつっ!?」」


 火で焼いていて、そのまま食べれば熱いだろう。

 それ気が付いていなかったのか――と、突っ込んでくれる者は今はおらず。2人して同じ反応をして、顔を見合わせ。笑った後。2人は少し冷ましてから再度実を食べたのだった。

 毒とか少し気にしていたが。一口食べた後の熱さで毒のことなど忘れて、普通に身体の心配とかすることなく2口目をいく2人だった。


 ちなみに知らないリンゴ見たいな実を食べた2人のそのあとはというと――特に何も起こらないと先に言っておこう。

 この2人のサバイバル?順調である。

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