第116話 知らぬところで―― ◆
「――ぅぅ」
「あっ、ベクさん。コールさん目覚ましましたよ」
「ほんとか?じゃガクを呼んで来る」
実りの町にあるとある建物内で人がバタバタと行き来している。
そんな中で1人包帯を巻かれ。ベッドに横になっている見た目は男性。ちょっと今は包帯やけがによりイケメン――の一部が隠れてしまっているが。それでも見た目イケメン男子――が居るため。少しだけ建物内の女性がわいわいしているようにも見えなくない。
「――どこだここ――?」
包帯を巻かれている見た目男性のコールは久しぶりに意識を取り戻したところだ。
身体を起こし少しあたりを見たところで、自分が病院に居ることを理解した。
「あ、そういえばあの時」
そして自分が機関車を走らせそのまま転覆させたことを思い出したと同時にコールの元に足音が近づいてきた。
「コール。何があったんじゃ」
グレーの長髪を揺らしながらコールの元へとやって来たのはガク。そしてその後ろには室内でも光り輝く身体の一部を持つベクが付いてきていた。
「すみません」
そしてコールがガクに話しかけられるとすぐに頭を下げた。
「いや、謝られてもじゃな」
その様子にガクは少し戸惑った様子だったが――次にコールが発した言葉で室内に居たすべての人の時間が一時止まることになった。
「――シェアト様は連れ去られました」
「ほっ?」
「はっ?」
「えっ?」
「――今――なんて?シェアト様が――連れ去られた?」
「誰に!?」
コールの言葉によりガクとベクがそれぞれ少し意味を理解するのに時間を費やしている間にガクやベクの後ろに居た。他の人。実りの町の人が騒ぎ出した。
そこでガクとベクも意識を取り戻す。
「――コール。もう一度聞くのじゃが――何があった?」
「シェアト様が連れ去れました。私が戻ったら誰も――」
「――連れ去られたって――誰にじゃ?」
「悠宇殿たちでしょう。まさか――ここまで完璧にしてやられるとは。完全に油断しておりました」
再度頭を下げるコール。しかしガクもベクもいまいち状況が呑み込めない。何が起こったのかはわかったと言えばわかったのだが――。
「――コール。それは本当の事か?」
「はい。私が戻った杜若の地には誰もいませんでした。人の気配は全く――」
「杜若がどのようになっているかわからぬが。どこか他のところに居た可能性は?」
「ありません。あそこは建物1つのみ。隠れれるようなところはございません」
「いや、でもじゃ、悠宇殿たちがシェアトをか――」
コールの言葉を信じれないガクがつぶやくと隣でベクも話し出した。
「信じられない話だが――」
「ベク。事実だ。疑うなら杜若に行ってみればいい」
「行ってみればいいと言われてもなー」
「――コールが悠宇殿の機関車脱線させたからの」
「――あっ」
ベクとガクのつぶやきでコールはもう1つ忘れていたことを思い出した。
「――えっと――機関車の方はどうなって?」
「コールが帰って来てからずっと脱線したままじゃ。ここの者だけではあの規模のものは動かせん」
「まあ簡単に言えば。また移動手段がなくなったじゃな。馬で行けなくもないじゃろうが……」
実りの町から杜若までは相当な距離がある。
そのため現状実りの町から杜若に行くのは相当な時間がかかってしまうのだ。
室内に居る全員が難しい顔をするのだった。
ちなみにコールの話を信じないわけではないが。ガクもベクもシェアトが悠宇たちに連れ去られたというのはどうも納得がいっていなかった。
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