第117話 死に物狂い ◆

  タッタッタッ……。


「――はぁ――はぁ――」


 暗い夜道を走る金髪のボブカットの少女が居た。

 時折すれ違う人は何事かと思い少女の方をちらっと見る人も居た。

 暗くても目立つ髪色もあってか。少女が走っている間そこそこの人の目に留まっていたが。誰一人少女に声をかけようとする人は居なかった。

 そもそも見た目から外国人?というちょっと声をかけにくい雰囲気。というのもあったが。一番は走っている少女が――。


「――はぁ――はぁ――あれは……ダメぇ――じぬぅー!はぁ――」


 ……明らかに関わってはいけない雰囲気を出していたからだ。


 ちなみに一応言葉はちゃんと聞けばわかる日本語を話しているのだったが。少女が走りながらということもあり。そもそも聞き取れず。聞き取れた言葉と言えば強めに発音していた『じぬぅー』だけだったので、少女が横を通りすぎてくくらいでは何を言っているかは誰にもわからなかった。

 そして人は緊急時にはすべての力を出せるというのか。この時の少女はかなり必死に、自分の出せる全速力。スタミナを使い切っても構わないという勢いで走っていた。

 表情もなかなかのガチでやばいと言っているような表情だ。

 少女はかわいい顔をしているのに――切迫したようなというべきか。命を狙われているとでもいうのか。そのかわいい顔に似合わない表情をしていた。その表情もあって声をかける人が居なかったりするのだが――そもそもあっという間に少女が通過するので声をかけることができなかった――と、思われる。


 なお、走っていく少女を見た人は知ることがないことだが。実は本当に少女は生死を?彷徨いそうなことになっていたのだが――さすがにそこまで考える人は今のところいなかったので警察に通報――などは起こらなかった。

 

「――はぁ――な、なんではたひがー。こんな――はぁ――めに――悠宇!」


 息を切らしながら走っている少女の名をシェアトという。

 この世界の人間ではなく。とある能力?不思議な力などなどいろいろなことがあって、こちらに来ている少女なのだが――。 

 とにかく今は何やら必死に走り。そしてぶつぶつと言いながら走っていた。


 ちなみに少女。シェアトは今居る土地の土地勘など全くなく。今は自分がどこに向かっているかはわからない状況だったが。

 とにかくシェアトは走っていた。

 ――あの危険な場所から逃げるために。


 何故シェアトがそんなことにになっているかというと。それは数分前の事シェアトは海楓の家に居た。そして、今日はこのまま海楓の家で過ごす予定だった。

 予定だったが。それは急遽変更となった。というかシェアトが変更した。しなければ命がないと直感が言っていたからだ。


 何があったかというと――まあわかる人はわかると思うが。


 海楓の料理が原因である。


 先に言っておこう。

 シェアト。ご愁傷様。と。

 

  タッタッタッ……。


 暗くなった道を走る少女の姿が闇へと消えていった。


『――って、ここどこよ!』


 と、言うのはもう少し後のことである。

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