第136話 自分がたくさん
「ここが――ちかの家。大きいわね」
「あー、ちなみにこれが全部ちかの家じゃないぞ。この中の1つがちかの家だな。ってか、俺もちかの家の中に入るのは初めてだが」
「そうなの?」
「ああ。何かと入れてくれなかったからな」
これは悠宇とシェアトがちかの家の前へと到着した時のこと。
悠宇からすると、いつもは建物の前までだが。今日は緊急事態というべきか。シェアトというこのままではどこにも行くところがない?いや、行くところはあるはずだが――とりあえずこのままではまた誰かに絡まれる可能性などがあるため。今晩だけでも休めるところを見つける必要があるシェアトと共にちかのところへとやって来ていた。
「ってか、これは――連絡したらいいのか?それともこのまま部屋の前まで行っていいのか――」
少し前にシェアトと話した悠宇は。ちかの様子からして片付け――と、思われる何かバタバタを今していると思っていたので。さすがに突撃訪問はせずに一度建物の前で考え――などと思っていると。悠宇とシェアトの方へと人影が声をかけながら近付いてきた。
「もういた!」
悠宇たちのところへと近づいてきたのはちか。部屋着と思われるラフな服装のちかがちょうど建物から出てきた。
「おお、ちか。悪いな」
「本当ですよ。ってか。なんでこうなるんですかね」
「仕方ない。シェアトが逃走してきたんだし」
「あー、まあってかとりあえず。一晩だけですからね」
「だそうだ。シェアト。明日には――まあ休んだら向こうに帰ろう」
ちかの出迎え?を受けた悠宇とシェアトはそのあとすぐにちかの部屋へと入ったのだった。
これが少し前の出来事。そして今はというと――。
「――い、いいですか?絶対私の部屋へは立ち入り禁止ですからね」
悠宇とシェアトがちかの家の室内へと入ると。まずちかが2人にそう言ったのだが――。
「助かった。ありがとう。ちか」
「おお、ここがちかの家――ここはここで綺麗でいいところー」
「にしても――ちかの家めっちゃ綺麗だな。まあ俺のところが――か。でもいや、マジでこれなら全然いつでも人呼べるじゃん」
「うんうん。私のところといい勝負ね」
「――シェアトのところは比較していいのか――な気がするが。コールさんが絶対全部してるだろうし。ってか、シェアトの本当の家は見たことないか」
「そうね。悠宇たちとあったのは仮の場所だし。本当はもっと大きなところよ。ここよりもはるかに大きいわ」
「ちょ、ちょっと。2人とも聞いてますか!?立ち入り禁止わかりました!?」
悠宇は急遽部屋に居れてくれたちかにお礼を言ったが。そのあとは室内を見つつすぐにシェアトと話しだし。シェアトはというと。ちかの立ち入り禁止――などと言う話は右から左へと流れていた。
悠宇とシェアトの近くでちかが飛び跳ねながら抗議しているが――ほぼ意味なしである。
「ちょっと。追い出しますよ!」
「あっ。ちかこっちの部屋も見ていい?」
「だからダメ言ったでしょうが!」
「いいじゃんいいじゃん」
すると。悠宇と話していたシェアトが活動開始。足取り軽やかにちかの家の室内を歩き回りだした。
もちろんちかはそれを止めようとすぐにシェアトを追いかけるが――。
こういう時のシェアト。まだちかの部屋。寝室の場所は聞いていなくても一発で当てるのだった。
「ここは何があるの?」
「ちょっと待った!」
「2人とも頼むから怪我とかするなよ。せっかく獅子からも逃げれて一息なんだから……って聞いちゃいないか」
悠宇はというとちかに通してもらったリビングで背伸びをしつつ。室内探検?へと向かうシェアトと、それを追いかけるちかに声をかけていた。
なお。そんな間にもシェアトは行動を継続。ちかがすぐにシェアトの後を追いかけ。勝手にドアを開けるシェアトを止めようとしたが――シェアトの行動は早かった。
ガチャ。っとシェアトが閉まっていたドアを開けた。
「――えっ?」
「あっ!電気消し忘れた!」
「――なんか騒いでる?」
「悠宇!すごいわよ」
「ちょ、先輩は来なくていいですから!って、早く閉めろ!」
「なんで。すごいわよ。悠宇!」
悠宇は後ろから聞こえてくるちかとシェアトの声に反応して声の方を見た。すると、何やら悠宇の方を見て手招きしているシェアトと、絶対にこっちに来るな。というオーラを悠宇に見せつつ。シェアトの腕を引っ張るちかがいた。
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