第137話 自分がたくさん2

「一応だけど――夜にあまり騒がない方がいいかと」

「いやいや、悠宇すごいわよ。これ悠宇がいっぱい」

「ちょ、シェアト。黙る。先輩はそこから動かない」

「いや――ってか、マジで騒がない方が――」

「もう。悠宇早く早く」

「ダメだって。ちょ、シェアト!」

「……元気すぎだろ」


 現在ちかの家の室内は大変にぎやかな状態となっていた。

 悠宇を呼ぶシェアト。

 そのシェアトをどうすればいいのか迷いつつもとりあえず腕を掴み慌てているちか。

 そして、そんな2人を見つつ――足を動かしだした悠宇が居た。

 一応悠宇も言っていたが。時間的には夜。あまり騒がない方が良いが。盛り上がっているちかの家の中だった。


「ちょ、先輩来なくていいですから。ストップ」

「悠宇。すごいわよ。悠宇がいっぱい」

「俺がいっぱいってなんだよ」

「だから――ダメ!わーわー!」


 3人の距離は数歩離れているだけ。

 悠宇が歩き出して2人のところへと行くと――ちかがシェアトを放置して悠宇へ騒ぎつつタックルを仕掛けた――が。


「――よっと」

「ぎゃっ」


 ちか。即悠宇に捕まった。

 というかタックル。ではなく。単に悠宇に抱き着き。受け止められたような形となり。そのまま身軽なちかはというと悠宇に軽く抱きかかえられる形でシェアトの方へと足をそのまま進めた。


「悠宇。見てみて」

「シェアト。夜なんだしあまり騒ぐな。近所迷惑だ」

「でもさぁ。これ」

「先輩。ストップ。ストップして――」


 必死に悠宇を止めようとしたちかだが。再度となるがそもそも3人の距離は近い。

 ちかを受けとめた悠宇が数歩さらに進めはシェアトのところ。そしてそもそも悠宇はというと――。


「何があったんだよ」


 シェアトの声かけで、何があったのか気になり。ちかはストップをかけてきているがそのままシェアトの元へと行き。シェアトが開けたドアの中を見ると――。


「……おぉ。これはこれは――」


 驚きの声を漏らした悠宇だった。

 今悠宇が見ている先には――ちかがこっそりといろいろ作っちゃった悠宇の写真やらやらである。また悠宇とシェアトが急遽来ることになり。いろいろと詰め込まれた部屋でもあった。


「――」


 ちなみに悠宇に抱きかかえられている状態のままのちかは悠宇に抱き着いたまま。この世の終わり?みたいな表情をしていたのだが。それは悠宇に抱き着いていたため。悠宇もシェアトも知ることはなかった。

 なお、ちかの頭中は――。


『やばい!隠した先輩のグッズが――言い訳どうしよう。言い訳言い訳。こんなの見られたら――って、見られた!どうしようどうしよう……シェアトのアホー!……』


 こんな感じだった。

 めっちゃ焦っていた。

 悠宇がちかの秘密を知ってしまった――というそこそこ重要な場面だったのだが。


「――まあ、ちかだし。これくらいはしていると思ってたけど。すげーな。ここまでか。うんうん。よくやるよ」

 

 もし。の世界があれば。今までの兄妹のような仲良し悠宇とちか。という関係が壊れたかもしれない場面だったが。

 ちかの秘密を知った悠宇から出てきた言葉はそんな言葉だった。

 多少は驚いていたものの。特にちかへの評価を変える――ということはなかった。


「…………えっ?」

「うーん。なんかこういう時って。悠宇みたいに冷静な反応はしないもんじゃないかしら?」


 そのため。、悠宇に抱き着いたまま。世界の終わりの様な表情をしていたちかも拍子抜けしたような表情で悠宇を見上げ。

 ちかの秘密をとっとと発見。暴いてしまったシェアトも何とも言えない状態。こちらの世界の事があまりわかっていないこともあったが。それでも自分の家の中に何故か悠宇の写真やらやらをたくさん持っていることはおかしいのでは?と、思いつつも悠宇の下反応に頭が付いていかず。首を傾げるのだった。

 なお、この時のシェアトの考え。悠宇の反応はおかしいのでは?は本来なら当たりである。あたりであるが――悠宇だったので。おかしなことになっていたのだった。


「うん?どうした?ちかにシェアト。『お前何言ってるんだ?』みたいな表情してるけど」

「「してる」」

「えっ!?」


 ちかの家。なんか変な空気?が流れているのだった。

 ちなみにこの後この場所に海楓もやって来るのだが――それはもう少し後のこと。

 今はちかの秘密がシェアトにより。悠宇にバレた。という重要な……いや、サラッと流してもいい。どうでもいい場面である。


 ……サラッと流すのはどうかと普通は思うところだが。

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