第177話 お久しぶり――です?2

 キキィィィッ――。

 草原のど真ん中にブレーキ音が響く。


「きゃっ」

「ちょ、悠宇。ブレーキかけるならかけるいってよー」

 

 にぎやかに移動をしていた悠宇たち。しかし今はちょっと慌てていた。

 何故なら前方の線路上に人影があったからだ。先ほどまで長閑な場所。大自然の中と言うべきか。草原の真ん中を走っていたので、まさかまさか線路上に人が――と、いうことを誰も予想していなかったためだ。

 幸い、ちかが早く反応したので、急ブレーキまではいかなかったが。それでも『何もない草原の中』とハンドルを握ってた悠宇は思っていたので、そんな中でいきなり人影を見つければ、まだ距離があってもとっさの判断で少しきつめのブレーキとなったため。前方をすぐに確認できず反応が遅れた2人が少し悲鳴と文句を言いつつ悠宇にしがみ付いていた。


「――なんかどさくさに紛れてくっついているような……」


 唯一悠宇とは離れたところに居るちかは、少し身体がかっくん。と、なっていたが態勢を保ちつつ。再度複雑そうな表情をしてそんなことをつぶやいていたが……そんなちかに悠宇たちが気が付くことはなかった。

 何故なら前方に見える人影の先頭に見覚えがあったからだ。


「げっ。悠宇!バックバック。逃げるわよ」


 外の光景に一番早く気が付いたのはシェアトだった。


「いやいや、なんでどう見てもガクさんたちじゃん」

「いやよ。ここで会ったら連れ戻されるじゃない。美味しいもの食べれなくなるじゃん」

「――この人本当に王女様なのだろうか……」

「えっと、バックは……」


 悠宇とシェアトがそんなやり取りをしていると、ふと悠宇の手元には別の手が伸びてきた。


「海楓は何してるんだよ」

「とりあえずバックの準備?」


 こいつは何をしているんだ。と、悠宇は思いつつ海楓の手を進行方向を変えるレバーのところからどける。


「海楓は余計な事しなくていいから――暇ならこっちに向かってきているガクさんたちに何か合図してくれない?汽笛とか。向こうに知らせた方がいいでしょ。まあ気が付いているとは思うけど――」

「悠宇。即逃げるわよ。捕まったろくなことないわ」

「シェアト。耳元で騒がないで――っか、本当にこの人王女様なのだろうか――」

「――何してるんですか」


 ちょっとバタバタしている悠宇の周り。そんな悠宇たちの姿を見つつちかが呆れていたのは言うまでもなく――そして、現在は機関車が止まっている為。前方を見なくてよくなったちかが悠宇たちのところへと移動。そして悠宇の腕を掴んだ。


「悠宇先輩。ここに居てもですし。行きましょう。ガクさんたちが慌ててこちらに向かってきていますし」


 そしてシェアトと海楓の間を上手に抜け悠宇を車外へと押し出していった。

 それはそれはスムーズなもので、シェアトと海楓はなんの反応もできなかったのだった。


「ちょ、ちか。危なっ。なっ!?」

「早く行ってください」


 なお、悠宇がちょっとちかに強めに運転席から落とされたのは――触れなくていいか。

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