第176話 お久しぶり――です?
ブオォォォ――。
何もない草原の真っただ中を走る違和感満載の漆黒の機関車。
周りを見れば大自然。しかしその大自然を真っ二つにするかのように線路が敷かれ、その上を漆黒の機関車が快調に走ってる。
もちろんその漆黒の蒸気機関車の中に乗っているのは悠宇たち。現在は再度実りの町へと急いで――。
「ねえねえ悠宇。ちょっとこのあたり止まってもいいんじゃないかしら?ここなら精霊が反応してくれる気がするわ」
「いや、まずは町へ戻るのが先かと――」
「悠宇。ケチだとモテないよ」
「海楓はお静かに」
「ケチケチー」
「悠宇。別に急がなくても誰も心配してないわよ。旅は楽しむものよ」
「ほら。悠宇シェアトも言ってるんだい。ブレーキブレーキ」
「ちょちょ、急にハンドル握るな」
「海楓私も手伝うわ」
「OK」
「OKじゃねー」
「「せーの」」
「――にぎやかですねー。悠宇先輩ちゃんと前見ててくださいよ」
は、いるだろうが。
運転中の悠宇にちょっかいを出しているシェアトと海楓。2人がちょっかいを出すため。安定したスピードでは走っていなかったが――でも、進んではいるので大丈夫だろう。
ちなみに、今回も悠宇とは反対の席に座り悠宇が見えない方の前方を見ているちかはというと――何とも言えない表情。悠宇にちょっかいを出すシェアトと海楓に対して『いいなー』みたいなオーラを出しつつも。悠宇に任されているからか。2人のところには入らず前をチラチラ見つつ。悠宇たちの様子を見ているのだった。
そんなこんなで杜若を出発して少し。
悠宇たちはにぎやかに?移動中だった。
「ってか、別に私帰らなくてよくない?」
するとふとシェアトがそんなことを言い出した。
「いやいや、なんで」
「だって私は悠宇と結婚するでしょ」
「勝手に話を進めないように」
サラッとシェアトが言っているが。これはシェアトが本当に言っているだけだ。
「悠宇。ここは主人公モードで」
またか。と、悠宇が呆れていると海楓も会話に入って来る。
「海楓は意味わからない事言わない」
「巻き込まれたらチャンス!」
「いやいや、海楓楽しみすぎ。どうするんだよ。変に巻き込まれて、向こうの世界戻れなくなったら」
「悠宇なら大丈夫でしょ」
「なんでそうなる。ってか、海楓も巻き込まれるぞ」
「その場合は悠宇を盾にして――安全そうなら巻き込まれるかな」
「……すでに一度海楓には上手に使われたことがあったような――それこそ今向かっているシェアトたちが居た町に初めて行ったとき――」
「気のせいじゃない?」
「記憶忘れるの早すぎだろ」
「――あれ?」
「コールもなかったんだしあれは全部悠宇に任せるって言う意思表示よ」
「絶対違うと思う」
「ちょちょ、悠宇先輩!」
悠宇とシェアト、海楓は話していたため前方をよく見ていなかったため。ちかの『――あれ?』という声に反応できなかった。
「うん?ちかなんか言った?」
「先輩。前前!人!」
「「「えっ?」」」
4人の中で唯一ちゃんと前を見ていたちかが慌てて声をあげると悠宇たち3人も前を見る。シェアトと海楓は悠宇が見ている隙間から――だったのだが。シェアトと海楓がのぞいた瞬間には機関車にブレーキがかかっていた。
キキィィィッ――。
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