第124話 絶対に立ち入り禁止

 「悠宇先輩ありがとうございました」


 ちかを家まで送るため一緒に歩いていた悠宇はちかの家の前へと来たところだ。

 ちかが悠宇の方を見て挨拶をしている。


「いや、ってか、絶対に敷地内にすら入れないちかの徹底ぶり」

「な、なんですか」

「いや、いつも建物の前で絶対ちかは挨拶してくるなーと」

「そ、そりゃそうでしょう。悠宇先輩だからと言って――もし玄関まで付いてきてもらった――まあその、何かするかもですし。不法侵入とかしそうですし」

「いやいや、ってかちかが何か隠しているのはよくわかる」

「か、隠してるって、そんな事微塵も――」

「ほら、はっきり言えない。って、詮索するつもりはないが――って、戸締りちゃんとしろよ」

「しますよ!」

「満腹だろうが。チビだしちょっとは食えよ」

「食べます――ってちょっと待った!」

「ちゃんと風呂入って寝ろよ」

「だからちょっと!って、先輩は私のなんですか――じゃなくてチビ言った!」

「あと、ちか。夜に騒ぐと近所迷惑だな」

「完全に先輩が悪いんですけど!?」

「じゃ」

「なんかめっちゃ適当に言って普通に帰ろうとしてる」

「えっ?やっぱり部屋まで送れって?」

「言ってないですーって、悠宇先輩もなんか二重人格じゃないですが。私前だけ意地悪レベル跳ね上がりません?特に最近」

「気のせいじゃないな」

「ですよね。気のせい――って、事実かい!」

「突っ込んだ。って、マジでちゃんと戸締りしろよ」

「します。って、もう、はいはい。先輩も暗くて迷子にならないようにちゃんと帰るんですよ」

「おかしなこと言うな。って、ちかの家の前まで来てからの方が話している説」

「ですです。確実に話してますね」

「じゃ、次こそ帰るわ」

「あっ。はい。ありがとうございました。おやすみなさいです」

「ああ」


 もし今悠宇とちかの周りを誰かが歩いていたら、この2人は建物の前で何をしているのだろうか?めっちゃ話してる?言いあっている?ちょっと怪しい――?などと思われたかもしれないが。

 無駄な話をしている悠宇とちかの姿を見たものはたまたまいなかった。

 防犯カメラくらいには映っているかもしれないが――そんなものを確認する人は居ないだろう。


 ということで、ちかを家の前まで送って来た悠宇。

 今日も建物の前(これがいつも通り)でちかと――そこそこ長く話してから、悠宇は1人で家へと向かって歩き出したのだった。

 休みの日に朝からちかと海楓がやって来て起こされた後。別世界へと旅立ち。

 そしてそして別世界の人たちとなんやかんやとあり。

 こちらへと連れてくることになり――。


「そういえばシェアトを海楓に任せて大丈夫なのか――なんか嫌な予感がするんだが――でももう今日は海楓に任せよう。よし」


 ふとシェアトのことを思い出しつつ家へと向かう悠宇だったが。

 今シェアトは海楓の家に居る。

 もしかすると腹を壊している可能性もあるが――でもまあ海楓が居るから何とかするだろうなどと思いつつ。


「そこそこ満腹だが――なんか軽くは欲しいか。こっちまで来たし。ちょっとコンビニ寄ってから帰るかね。って、コールさん大丈夫――時間の流れが――だがまあまだ大丈夫だろう」


 悠宇はコンビニ経由で家へと変えるために1人夜道を進んだのだった。

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