第125話 とりあえず厄介事回避

 悠宇がちかと別れて少し後の事。

 このまま進めば斜め前にコンビニが見えてくる――見えてきた。と、いう時だった。


 「――なんでだよ」


 悠宇の視線の先には5の男女の姿が見えた。

 薄暗い中だが。コンビニの前ということもあり。明るく顔もほぼほぼ認識できた。さすがに背中を見せている男性の顔はわからないが――いや、わからなくもないが――。

 まあ、全員の顔を今は認識しなくても、今日1日そこそこ長い時間一緒に居た人の姿があれば、さすがにまだ記憶がしっかりと覚えており。ぼんやり。なんとなくでも脳内でしっかり補正がかかった。


 どうしてこんな状況になっているのかはわからないが。

 とにかく何か起こってる。

 なお、本来はすぐに飛び出して行くところだろうが。

 今の悠宇。呆れ半分とでもいうのか。何をしているのか――という思いが強く。ちょっとだけ無駄なことを考えたりしていたのだが。それは本当に少しの間。

 悠宇は頭の中から余計な考えを飛ばし。

 再度前方に見える男女を確認。


 状況整理をすると。多分金髪でボブカットの少女。明らかにシェアトが居る。

 なんで海楓と居るはずのシェアトがこんなところに居るのかは不明だが。間違いなくシェアトだ。

 悠宇たちがこちらの世界に連れてきてしまったというべきか。無理矢理――というのは今はちょっと置いておき。とにかく今はこちらの世界に――遊びに来ている?シェアトが何らかの理由により。男3人にコンビニの前で絡まれている。ナンパかな?などと悠宇は思いつつ。一応近寄る準備をしつつ。あたりを確認。一緒にいる可能性の高そうな海楓を探してみたが――居たらこちらも目立つだろう海楓の姿は――ない。コンビニの中にもなさそう――いや、見えない。もしかしたらレジにでもいて、シェアトが外で待っていたという可能性も――いや、それはないな。海楓が異変に気が付かないわけはないだろう。


「にしても、俺ってちかの家に寄って来ただけだから。海楓の家に居たはずのシェアトがここに居るって、かなりのスピードでここに来たことになりそうだが――まあいいか。って、どうしようかね」


 再度悠宇は近寄りながらちょっと余計なことを考えたが。再度払い。

 今度は自分と同じく。シェアトの近くに迫りつつある1つの背中をロックオンした。

 こちらも何故この場に居るのかは不明だが。

 とにかく現在の雰囲気的に相手の不意を突いて突っ込もうとしているのはわかり。さらに、後ろ姿が見覚えがありすぎる。というか茶髪のボサボサ頭というのも見覚えありすぎる。ため確認しなくてもいいだろうと悠宇はその突っ込もうとしている背中をロックオン。


「――どんな状況だよ。って、確実にシェアトだし。何してるんだよ。っか、間違えなく接点を作ると厄介と見た」


 そこから悠宇の行動は早かった。

 少し前を行く茶髪のボサボサ頭。間違いなく獅子だろう後ろ姿を見つつこちらも加速。

 悠宇は運動はダメ――ではなく。少しくらいならまあまあなことができるので、ちょっと。一瞬だけならそこそこの力を見せることができた。

 何を悠宇がしたかというと。獅子にまず追いつき。獅子の背中へと飛び蹴り――は、無理なのでとりあえず背中を押して――。


「――おいおい俺の――ぬわっ!?」


 変な声が聞こえたところでズッコケていく茶髪のボサボサ頭がシェアトに絡んでいる男3人のうち2人を突き飛ばす形になったので、悠宇はそのまま獅子の上は跨がず。跨ぐとシェアトを通過するためだ。

 悠宇は獅子をよけ。そのままあっけに取られていたシェアトの手首をつかみ――。


「何してるんだか」

「――悠宇!」


 とりあえずその場から少しでも離れるためにシェアトととともに走りだしたのだった。

 幸いシェアトは途中から悠宇の姿を認知していてくれたので、悠宇が走りだすことも理解していたようで、流れるようにシェアトは男たちの前から駆け出すことができた。


「――なっ、ちょっ、なんだよてめぇー」


 1人残されていた男の声が聞こえた気がするが。悠宇は獅子にそれを任せてコンビニの前を通過――そしてとりあえず次の角を曲がったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る