第64話 子5 ★
「おお。すげぇーな。俺完璧じゃん。とりあえずこれでいつでも向こうに送れるようにして――」
別空間とでもいうのか。新たな場所への行き来をできるようにしたオニトは、いろいろ呟きながらその後せわしなく動いていた。
そのあとは布でくるんだ少女を蒸気機関車の運転席から駅舎内へと運び。古ぼけたバージョンの方の駅舎に残っていた長机の上に少女を寝かせた。
少女の方は運ばれても全く目を覚ます雰囲気はなく。無防備に手をだらんとした状態で軽々とオニトに運ばれていた。
「これなんかイケナイ事を俺してるみたいだなー。って、もちろん俺はそんなことはしないが――まあとりあえずちょっと記憶を遊ばせてもらいますか」
そんな少女を見つつオニトは何やら危ない思考をしていたようにも思うが――運ぶ以外少女に触れることはなかった。
だが。明らかに不敵な笑みをオニトはしていた。
でもそれを止めれるものはこの場にはいない。
少女を寝かせた後。オニトは少女の頭の方へと移動した。そして自身が一番得意とする能力を最大限活用しだしたのだった。
オニトが何をしたか。それは――。
「えっと――まあ俺はまだまだこっちに居るからー。って、それは時を止めて冬眠させればいいから気にしなくていいか。とりあえず記憶だよな。記憶。ガキの頃は――まあざっくり――って、改めて考えるとなんかいろいろと面倒だな。まあ俺が知り合いで、ちょっとガキの頃から世話していたでいいか。いいな。そしたらその頃は――うまい事俺の家族くらいも関わってくるだろうし。いや、あまり関わられすぎてもか。変に詮索されるといろいろ設定を向こうでもしないといけないしな。って、とりあえず――まあ見た目からしてこのガキは――学生か?学生だよな。中学生――いや、高校生?にしてはチビか?あー、わからん。まあでも身長くらい別にどうでもいいだろうし。見た目――ガキだし。中学生設定で良いな。それなら小学生のころから――って、そうか。別にガキはガキ。そんなに気にしなくてもざっくりで何とかなるか。それに大人でもチビはいるもんな。そうだそうだ。そこまで難しく考えなくていいな。だから――チビ介の時くらいの記憶はもともとないだろうが。あまりになさ過ぎても不自然だから。少しくらい記憶を残すだろ。そして適当に両親は――なんだ?こういう時は海外とかでいいか。いや、チビ介の時からガキ放置で海外行くやつあるか?あるか?うーん。でも面倒だな。あー、まあとりあえず。忙しい設定からの。そうだそうだ。なるべく俺が預かる形で――そうすればこっちにガキだけ残すような話になるかもしれん。まあならなくてもいいんだが――その時が来たら俺が適当に話作れば良いし。まあ何とかなるだろう。よし。でだ。次は――どのあたりまで作ればいいんだ?まあ中学後半。いや、中学から1人暮らしでもいいか。そうだな。面倒だしもう俺が見ている設定でもいいだろ。つかあとなんだ?何埋め込めばいい……?あー、女の事とかわからんな。あっ、でも待てよ。このガキ自身。見た目からして、この姿になるまでは生活していたはずだよな?ってことは――そこそこは生きて封印?されたんだろうし。誰がしたかは問題だが。まあでもとりあえず、なんとなく生活スキルみたいなのはすでに覚えてるだろ。知らんだら――まあそれはその時か。俺が向こうで住みだしたら。誰かの記憶コピーしたらいいか。あれ?向こうでそんなことできるか?出来る……よな?俺だし。そう俺なら何でもできる!とりあえず、記憶だけもうちょっといじって――いじって――って、なんか書きかえれないんだけど!?マジでこのガキ封印したの誰だよ!魔王だろう。ぜってぇー魔王だろうが。親切に俺が子供だけ見た目人間だから助けてやったんだから。解除しろよ解除。死んだら何もできない?それでも魔王かよ!あー、畜生!このガキが未来のべっぴんだからここまで俺が頑張ってるんだからな。魔王めー。向こう行ったら文句言ってやる。いや、俺向こう行かないかー。ってことで、魔王。今言う。何面倒な残しもんしてくんだよ!」
オニトは喉が枯れるまで、しゃべり続けながら拾ってきた少女の記憶をいじった。ちなみに誰もいないのに声に出す必要は全くない。それに声に出したからと言って誰かに届いているわけでもない。無駄なこと――と言えば無駄な事だった。
とにかく話すということをしばらくしたオニトは、ある程度少女の記憶をいじると、どてっと近くのベンチに腰掛けた。ミシッといったが壊れずにオニトをベンチは支えた。
「あー、なんか喉乾いたー」
オニトの喉が渇いたのはもちろん勝手に独り言を話していたからである。
「なんで俺はこんな事してるんかね。って、もう疲れたし。とりあえずこのくらいで少女冬眠させるか。できるよな?もし目覚めたら俺――無理だぞ?いや、こんなガキ連れて帰ったらマジで戦争始まるかもだからな」
いろいろと能力を使ったオニトは結局そこで少女の記憶をいじることをやめた。 それからオニトは、時が来るまで少女を冬眠させるために今度は自分の能力を使い。少女をその場で冬眠させた。
少女は長い長い眠りについた。
★
少女と同じ年くらいの孫がオニトにもできた頃。
オニトは一部制限をかけたまま。少女の冬眠を解除した。
その際少女は問題なく起き。オニトの計算通りことは進んだ。そしてその少女は――。
ちなみに一部制限残したのは、もし、隠し子だった場合の保険というやつである。
――今のまま育たなければ最悪の場合でも対処が簡単だからだ。
しかしこの時のオニトはとあることを計算に入れていなかった。
もし。自分が。オニト自身が死んだ場合はどうなるのかと――。
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