第180話 拡大していた
「そうじゃ、忘れ取った。悠宇殿。ドーナツ国への線路感謝する。このお礼はまた――そして、シェアトの無事が分かったことだし。それにここ数日。特に町の方に何者かが来るということもなかった。だから今から実りの町へと戻ってドーナツ国へと向かう方法を考えてくれんか?今なら問題なく行ける気がするんじゃ」
「えっと、はい?」
シェアトと何やら話していたはずのガクがいつの間にか悠宇たちのところへと移動してきており。そんな事を悠宇に言った。
もちろん悠宇は――突然のことに驚くしかなかった。
「おお、悠宇がいい感じに主人公路線に入ったね」
ちゃちゃを入れるのはいつも通り海楓である。
「海楓。いつもながら黙るってか――向こうみたいにぴしっとできないのかよ」
「向こうは向こう。こっちはこっちー」
何故か胸を張る海楓。そんな様子に呆れる悠宇。
「……最近不真面目海楓しか見てない気がする」
「あー、ちかちゃん。悠宇がいじめてくる」
どうやら悠宇の反応が面白くなかったのか。海楓はちかの方へと向かいつつそんなことを言うのだが――。
「――私も最近は別人の海楓先輩しか見てない気がします」
「ちかちゃんにも!?」
見事ちかにも振られた?海楓だった。
と、そんな話はちょっと置いておき。悠宇たちの前ではガクが再度話してきた。
「もしかしたら気が付かれておらん――事があるのかはわからんが。でもなんの接触もない。今がチャンスじゃ。ドーナツ国には確か――アク。誰じゃった?向こうの長は」
どうやら名前が出てこない様子のガク。少し考えた後。アクの方へと話を振った。
「あっちは――変わってなければクラズじゃなかったか?あのぽっちゃり」
「あー、そうじゃそうじゃ。食うしか頭にない奴だったな。久しぶりで忘れ取ったわ」
「ぽっちゃり?」
「名前のまんまって感じだねー。ちょっとどんな人か気になるね」
新しい人の名前が出てきた。今でも一部しか覚えていないのにまた新しい人と――などと悠宇が考えていると。どうやら覚えるのは得意?な海楓は悠宇と違い名前ではなく町の名前。国と付くので町なのかも――だが。とりあえず今のところは情報がないため隣町とするが。その隣町の名前とトップ。代表の名前を頭の中で思い描いたのだろう。1人楽しそうにするのだった。
「海楓は置いていった方がいい気もするが――コミュ力オバケは必要か」
「あー、また悠宇が失礼な事言った」
「言った」
「素直だねー」
「なんかテンション高いってか。楽しそうだな」
「そりゃ楽しいでしょ。いろいろ起こりそうな感じだし」
「――そのうち海楓が目立って捕まるぞ」
「それは大丈夫でしょ」
「どこから来るんだかそんな自信」
「まあ――勘?」
「恐ろしいわ」
「でも、私たち別に裏の顔とかないし。あっ、悠宇もしかして裏の――」
「ないから。なんもないから」
「いやいや、でも悠宇のお爺ちゃんなら――」
「それは否定できないが――でも何もないな」
「面白くないな」
「――あの――悠宇先輩。海楓先輩。ガクさんが返事待ってます」
ちかの声で現実に戻る悠宇と海楓。どうやら2人が話し出したことで、相談?と思われたのかはわからないが。ガクは静かに返事を待っていた。
「あっ。すみません」
「すみません。うちの悠宇が」
「海楓静かに。って、えっと隣町?に行くんでしたっけ?」
「そうじゃ。距離としては多分杜若までの倍とまではいかんが。もう少し離れていたはずじゃ。今はどうなっておるかわからんが。何も起こってなければ。向こうは向こうで生活しているはずじゃ。豊かとは――思えんが」
「まあ行く方法となると――この機関車を使うことになると思うんですが――こっちはこっちで生活が――」
悠宇が持っている機関車。今も隣で漆黒のボディを輝かしている機関車が移動手段となるだろう。
しかし今のところ悠宇たちが本来住む世界へと行き来ができるのは杜若の駅にある建物内から。つまりそこをさらに離れるということは、元の世界に簡単に戻れなくなるということで――。
「よし!受けよう。人助けだね」
と、悠宇がいろいろ考えていると、何故かサラッと返事をする海楓だったりする。
もちろんそのあと悠宇。さらには悠宇の考えていたことが分かったちかも海楓を止めようとしたが――。
「ちょっとちょっとさっきから私抜きで何話してるの。ってかおいしそうな雰囲気があったんだけど。どういうこと!?」
多分ドーナツに反応したのだろう。
少し前まではガクとなんやかんやと話していたが。ガクが悠宇たちと話しだしてから、一応大人しく?悠宇たちを見ていたシェアトが話しに加わり――まあごちゃごちゃして、気が付けば話が勝手に進んでいった――ということだったりする。
「とにかく、一度実りの町に戻り会議じゃ」
「えっと――ちょっと待って――」
悠宇の声はがガクには届かなかった様子だ。
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