第54話 お爺ちゃん負ける

「もう!」


 簡単に現状をまとめると食べものの恨みは怖い。である。


 久しぶりにドーナツがあったのに、自分に回ってこなかったことに対し激怒したシェアト。客人の悠宇たちが居ることなどすっかり忘れプンプンと怒っていた。

 ちなみにコールに関してもドーナツが食べたかったのか。上下関係が逆転したようなやり取りが少し前に起こっていたりする。


「あの――」


 すると、騒ぎを大人しく聞いていた海楓が手を挙げた。


「あっ、ごめんなさい。悠宇たちのことを忘れてました」

「あはは。えっと。シェアト――様?」

「様なんていらないわ。シェアトって3人とも呼んでちょうだい」

「いいのかな――って、えっと、とりあえず、お菓子。ドーナツに関してですが。私たちが持ってくることもできますが――」


 すると、シェアトの目とコールの目が輝き。海楓に急接近した。


「「ほんと!?(本当ですか!?)」」

「え、ええ。私たちの住んでいるところではたくさん売ってますから――ね、ねえ悠宇?」


 海楓は急接近をくらい悠宇とちかの方へと逃げつつ返事をする。そして海楓は悠宇にも話を振る。

 今のところ悠宇たちは別世界から来ているということは話してないが。でもざっくりと、杜若のあたりで――と、言うことを話している。

 ガクたちは杜若という名は知っていても。かなりの距離離れていることもあり。そもそもここ数百年と誰か住んでいるという話を聞いたことがなかったということで、勝手に発展したようにとらえていた。一応悠宇たちは何もないと言ったのだが。悠宇たちの身なり。また悠宇の能力線路を作ることと、蒸気機関車という証拠。そしてドーナツがあり。あっさり認められていたりする。


「あ、ああ、無茶苦茶たくさんとかは無理でも――少しくらいなら」

「今は貴重なんだから1つで充分よ!」


 今度は悠宇に迫るシェアト。もし悠宇が今ドーナツを持っていれば襲われていたであろう雰囲気だ。急接近である。


「あっ悠宇殿私にも――」


 シェアトの後ろからはコールもちゃっかり挙手をしていた。


「ちょ、なんでサラッとコールも頼むのよ。私が先」

「あっ、すみません。あまりにドーナツを久しぶりに聞いたものでして――」

「はぁ――」

「悠宇先輩。今回はたまたま私が持って来れましたが。これ持って来れなかったらやばいですよ。命ないですよ」


 あまりの食いつきに少し怯えた様子のちかが小声で悠宇に話す。


「わかってる。でも――何とかなる気がするというかしないといけないというか」

「悠宇任せたから」


 すると、悠宇の肩に手を置く海楓。


「言い出したの海楓なのに丸投げするなよ」

「だって、好きなものずっと我慢してるのつらいじゃん」

「それは――だが」

「ドーナツとかお菓子は貴重だから――とりあえず私たちで半分がいいかしら?」

「いやいや私は一口で充分――」


 その後もシェアトとコールはドーナツについて話し。またそんな様子を見ているガクが呆れ。悠宇たちに関しては。この後どうなるのだろうか?と3人でコソコソ話すのだった。


「ってか、私たちって、こっちに来てから相当時間経っていませんか?」


 少しコソコソと話していると、ふとちかがそんなことを口にして、悠宇と海楓も『そういえば――』と、考えるのだった。

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