第53話 友達

「――ということじゃ。シェアト。これから悠宇殿たちに協力してもらい国を取り戻す」


 シェアトの部屋へとやって来た悠宇たち。そのあとはガクが簡潔に現状。状況を話し終えたところ。

 ちなみに、シェアトの部屋には椅子などがたくさんあるわけではないので、立ち話という状態で話していた。


「わかりました――――じゃ!ガクおじちゃん。もういいよね?悠宇。海楓。ちか。あなたたちの国の話をして!」

「「「――へっ?」」」


 すると、今までは真面目な顔をしてガクの話を聞いていたシェアトがコロッと表情を変えた。どうやらこちらが素のシェアトらしい。

 ガクが話している間だけ真面目な顔をしていたらしい。

 シェアトはニコニコと悠宇たちの方を今は見て、周りに居たガク。アク、コールのことなど見えないものとして扱っているみたいだった。


「シェアト、悠宇殿たちにはこれから――あと、おじちゃん呼びは――」

 

 そんなシェアトの様子に慌てているのはガク。まるで孫とお爺ちゃんのやり取りになってしまった場の雰囲気はとっても和やかになっていた。


「なんでよ。悠宇の能力はその場に居なくても大丈夫って説明してたでしょ?なら私とここでお茶でもしながら話していても問題ないはずでしょ?コール。お茶と果物何かあったかしら?今日くらい奮発しなさいよ。」

「はっはっ。ガク。シェアト様楽しそうだからいいじゃねえか。悠宇殿にちょっくら隣町までの道を言ってよ。線路敷いてもらった後はシェアト様の相手してもらえよ。ちょうどいいんじゃないか?こんな爺と婆しかいないところで我慢させてるんだからな。はっはっはー」

「アクはちょっと黙ってろ」

「アクおじさんの言う通りよ。私はとお話したいの」

「「「……」」」


 とってもにぎやかになったシェアトの部屋。

 そんな中で固まっているのは悠宇、海楓、ちかである。先ほどまでは堅苦しい雰囲気で固まっていたのだが。今は突然の友達宣言とさらに名前呼びで固まっていた。

 話の中でシェアトは本当にお姫様。王女様というのが確定したことにより。3人はどのように話しかけたらよいのか。そもそも気軽に話していいのか。悠宇に関しては『少し前にすごい姿見ちゃった気がするんだが?大丈夫だろうか?』などなどそれぞれがいろいろなことを思っている時だったので3人は全く状況がわからず反応もできていなかった。

 

「コール。シェアトを甘やかしすぎじゃないか?」


 ガクが呆れながらコールの方を見てつぶやく。


「そ、そんなことは――」

「ガク。いいじゃねえか。それに悠宇殿たちもさっきからいろいろ振り回してるんだぞ?少しくらい気い抜かしてやれや」

「悠長なこと言ってる場合じゃないんだがな」

「いいじゃねえか。町の奴らも悠宇殿たちからので今はご機嫌。ちょっとは楽しいまま行こうじゃねえか」

「――うん?ちょっと待って!」


 ガク。アク。コールがシェアトのわがままとどうしようか――みたいな感じで話していると。アクの発言にシェアトが反応した。

 ちなみにコールも反応し。コールに関しては首を傾げ頭の上にはてなマークを浮かべている見たいだった。


「――あっ、しまったー」


 すると、ドーナツ発言をしたアクがちょっと笑った後、ガクの肩に手を置いた。


「ガク。そういや、町の人達には分けたけどよ。シェアト様とコールはここに居たからすっかり忘れていたんじゃねーか?」

「馬鹿もん。今それを――」

「ガクー」


 すると、大変低い声と鋭い視線がガクに突き刺さった。


「あっ、シェアト。これには――」

「どういうことかしら?ドーナツ?ドーナツがあったというのかしら?詳しく話してくれる?」


 ゴゴゴゴーーと、地響きでもするかのようにシェアトのオーラが強くなり。ガクが小さくなる。今ここで身分が逆転?力が逆転?したのだった。


「あー、俺は悠宇殿が乗って来た機関車に似合うこの町の駅作らんといけねぇんだったわ。じゃ、シェアト様。また来ます」


 すると、何かを察知したアクが素早く。シェアトにぴしっと一礼をし部屋を後にした。それはそれは無駄のない動きだった。


「あっアク!」


 ガクが声をかけた頃にはドアが閉まり。アクの姿はなかった。


「ガクー?どういうこと?今は他の町と寸断されていて、ドーナツ国とかからのものが届かず。あるのはこの町の食材と、ここで作れるフルーツって聞いていたんだけど?」

「いや、シェアト、待てドーナツはな。その――」

「私大好きだったんだけど!?」


 そこから始まる孫と爺ちゃんのバトル?を悠宇たちは大人しく見ることになった。


 どうやら今のシェアトはこの町で取れるものだけを食べて過ごしていたらしい。ガクたちもシェアトが倒れるようなことがあってはいけないので食べ物に関してはなるべく良いものをシェアトのところへと回していたとのこと。

 そんな周りの気遣いなどをシェアトも知っていたのでわがままなことはなるべく言っていなかった(シェアト本人談)。先ほど悠宇たちと話そうとした時も。フルーツと言ったのはこの町で取れるものと知っており。今出来る最高のもてなしをしたと思ったからだったのだが――ドーナツ。お菓子に関してはここ最近全く食べることができなかったので、そのお菓子の名前。さらになんとなくみんなが食べたような雰囲気があるのに自分には――ということを知ったシェアト。しばらく噴火したのだった。


 ちなみに同じくここ最近お菓子など口にできていなかった、コールもシェアト側に立っていたのだった。


「なんで私の事忘れるのよ!ドーナツ!」

「どういうことですか!?」

「あっ――いや――」


 ガク。シェアトとコールにしばらく問い詰められるのだった。

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