第96話 後悔中 ◆
ガタガタとコールの元は大きく揺れている。
コールは今全速力で蒸気機関車をまた走らせていた。
先ほどは適度なスピードで実りの町へと向かっていたが。今は全速力。ワンハンドルの簡単なハンドルを一番奥まで押し込んでいる。
同じような周りの草原の景色がすごい勢いで迫っては去っていく。
「なんでもっと慎重にならなかった――」
コールはハンドルを押し込みながら唐突に現れた悠宇たちを信じたことを悔やんでいた。
シェアトがすぐに馴染んでいたこともあり。ほとんど内側の警戒をしていなかった。外からの事ばかり考えていたが。
よくよく考えれば。油断しそうな組み合わせだった。シェアトと同年代。同じ年くらいの男女が突然やって来た。
普通に考えれば大炎上が起こり。世界が。国がバラバラになっている時にのこのことやって来るのがおかしかった。
大炎上の後近くの町にすらまとも連絡が出来ない状況だったのに。杜若というここ何十年。何百年と使われていない。誰ももうずっと住んでいないと言われているところに急に人が来るのがおかしい。
もしかすると、あの黒い集団はすでにこちらの居場所を知っており。どのタイミングで押し掛けるか計画していたのかもしれない。
そして今回まずシェアト様を誘拐することを計画した――。
シェアト様が向こうの手に落ちればこちらとしては何もできない。
「――なんで気が付かなかった。もっと警戒しなかった」
何度も悔やむコールはハンドルがミシミシといっているのも気が付かず、力いっぱいハンドルを押し込んでいた。
蒸気機関車はすでに最高速度。今のところ急なカーブがないので脱線していないだけで、もし急カーブがあれば蒸気機関車は横転するだろう。というスピードで実りの町へと向かっていた。
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