第97話 お出かけ!7

「えー、普通過ぎない?」

「なんで過激なの選ぼうとするの!?って、普通でいいの!」

「ちかはどんなの履いてるの?ちょっと見せて、」

「だ、黙れー!って誰が見せるかー!」

「はいはい。2人とも周りの迷惑になるよー」

「――うん?そういえばだけど――あれ?なんか海楓のキャラ変わってない?こんな落ち着いた子だった?」


 服屋に来て何故まず下着を悠宇に選ばせようとしたシェアト。

 もちろんの事ながら悠宇にかなりの精神的ダメージを与えたのち――慌てて悠宇とシェアトの間にちかが入り。今悠宇は少し離れた紳士服売り場でぼーっと待機中である。

 特にほしいものがあるわけではないが。ダメージを受けたので、ぼーっと服を見て回復中である。

 というか、実際はちかに『悠宇先輩は離れていてください!しばらく別行動!シェアトは悠宇先輩に近寄らない事!』と、言われたからでもある。

 もちろんそう簡単にシェアトも悠宇から離れることはなかったが――でもちかの必死さにより。今は何とか別行動(互いに姿は見えている)状態である。

 そして、やっとというべきか。ちかの頑張りにより。悠宇ばかり見ていたシェアトは落ち着き。ふとお淑やか?になった海楓に気が付いたところだったりする。


「シェアト。変な事言わないでよ。私ずっと同じだよ?」

「……ちか。いつの間にか海楓が別人になったんだけど――」


 さすがにシェアトも一度気が付くと違和感を覚え。悠宇の次は海楓をジーっと見ることになった。

 

「まあ偽物ですね。これは」

「やっぱり!?」

「もう、ちかちゃん。ひどいなー」


 海楓の姿を知っているちかはというと、こちらもシェアトのことでバタバタしていたこともあり。実を言うとやっと海楓が学校モードになっていることに気が付いたのだが。それはいつもの事なので、特に驚くことなく冷静にシェアトの声に反応していた。

 シェアトはというと、まだ海楓という人物を把握できていないため少し混乱――そしてさらにジーっと海楓を見続けるのだった。


「――明らかに海楓がおかしい」

「だからシェアト。おかしくないって。これが私だよ」

「――ちょっと悠宇に報告してくる」


 シェアトは穏やかな表情で話しかけてくる海楓が怖いと感じてくるっと向きを変えたが。そこでちかに捕まった。


「大丈夫。偽物だけど、海楓先輩は海楓先輩だから」

「どういうこと!?」

「人前だと人が変わるの」

「ちかちゃん。勝手なこと言ってー」

「海楓先輩も切り替えがすごいですね」

「何もしてないよ?」


 明らかにキャラを作っている海楓だが――ここは誰と遭遇してもおかしくないところ。しっかりとキャラを演じきっている。


「いや、ホント急になんで?もしかして海楓も何かから逃げてるとか?あっ、もしかして敵が居る?なら私も合わせた方がいい?」

「シェアト。海楓先輩は放置で」

「ちかちゃんが今日は酷いなー」

「とにかく。悠宇先輩待たせるのもですから。シェアトは適当に服選んで」

「あっ、悠宇!何色が好みー?」

「だからシェアト!」


 ふと悠宇のことを思い出したシェアトはちょっと大きめの声で悠宇に聞く。

 もちろん。周りからの視線がまた――である。

 悠宇は悠宇でそーっと、商品の陰に隠れたのだった。自分は関係ありませんと。でもそんなことをしても結局――。


「ちょちょ、悠宇なんで隠れるのー悠宇の好み聞いてるんだからー」

「だからシェアト。声大きいから!」

「ちかも大きいよ?」

「それは――って、もう!この買い物疲れる!」


 にぎやかな買い物は続くである。

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