第98話 お出かけ!8

「――これ私が着れるサイズの服を与えればよしかな。うん。そうしよう」


 服屋に来ている悠宇たち。

 シェアトは何度も叫ぶためかなりの注目の的――いや、そもそも目立っていた女性陣がさらに目立っており。悠宇はというと姿を隠しており。学校モードの海楓はニコニコ母親ポジションみたいなことをしているため。実質ちかが1人でわたわたシェアトの相手をしていた。

 しかし、ちか1人でシェアトの相手をするのはなかなか大変だった。

 何故かすぐに悠宇の元へと行こうとするシェアトの首根っこを何度も掴んでいた。

 そしてそんなことをしているため。買い物は進まない進まない。

 ちかの体力がどんどん減り。シェアトに声をかけられるたび悠宇の精神的ダメージが蓄積していくのだった。海楓に関しては――特に何も影響はないかもしれない。


 と、いうことがしばらく続いた後。

 ちかがふとつぶやいたところである。


 シェアトとちかの体形は似ている。今のシェアトは海楓の服を着て言うため少しサイズに違和感があるが。多分ちかの着ているサイズがピッタリだろうと想像したちかは、そこからテキパキ動いた。


「シェアト。これ試しに着る」

「次はこれ」

「次」

「次――」


 先ほどまでは悠宇のところへと行こうとするシェアトを捕まえるだけだったが。早く買い物を終わらせてしまおうと考えたちかがシェアトの腕を掴み店内を回りだし。シェアトを振り回し。着せ替え人形にした。

 すると、シェアトがあっけにとられた――とまでは行かないなりにも。強めの口調でちかが指示していたので、少し怒らせた?と、感じたため。そのあとは順調に服選びが続いた。


「いやー仲の良い姉妹に見えるね」


 あまっていた海楓が同じくあまっていた悠宇の元へと移動して、小声で話しかけた。小声で話しかけたのは、ちかやシェアトに気が付かれないためである。


「高みの見物いうのか。サラッと海楓は保護者ポジションかよ」


 悠宇も話していることを気が付かれると厄介な気がしたので、小声で答えた。


「悠宇だって、見てるだけじゃん」

「あれに関わろうとは思えない」

「なんで?自分の好きなもの着せれるのにー」

「――いつもの海楓に戻ってるし」

「小声だから大丈夫でしょ」

「誰か知り合いいないかなー」


 悠宇は海楓と話しながらあたりを見るが――残念ながら知り合い。そもそも同年代の人すらいなかった。


「まあ今のところ店内にはいない感じかなー」

「いつ確認したんだよ」

「レジの後ろにある防犯カメラの映像見てた。それとあとは見える範囲で」

「なんかサラッとすごいこと言ったというか。やっていたんだな」


 悠宇は海楓に話しかけながらレジの方を見た。

 ちょうど悠宇たちが居るところからレジは近く。そのレジの後ろの棚には防犯カメラの映像らしきものが映っている。

 かなりしっかり見ればそこそこわかりそ――。


「いやいや、あんな画像見たところで、誰が誰かとかわからんだろ」


 である。

 悠宇の言う通り不鮮明な映像のため。大まかな姿がわかるくらいだった。


「わかるでしょ?大まかに分かれば。もしかすると――っていう人だけ肉眼で探せばいいじゃん」

「……なんだろう。なんかこっちの世界で能力使ってるような奴が隣に居た」

「悠宇はその世界に居なくても線路作ってるんじゃない?」

「――それは知らん。って、マジで海楓の視力どうなってるんだよ――まあ考えるだけ無駄だから考えないが」

「えー、頑張ってるのに」

「自由にしてくれ。って、来たな」

「――あっ、選び終えたのかな?」


 悠宇と海楓が話していると、更衣室へと向かっていた、ちかとシェアトが悠宇たちの方へと歩いてくる姿が見えた。

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