第43話 笑いを求めているのではない。

 なんとなく悠宇が気になっていたことを言ってみると。悠宇とちかの前に居たベクが明らかにやばい――という表情をしつつ固まり。大量の汗をかいている。

 頭のてっぺんから水でも出しているのではないかというくらい大量の汗を流している。大げさにではなく。これは事実である。今悠宇とちかの前で起こっている。

 ベクが脱水症状を起こさないか心配なレベルである。


「「なっ!?」」


 もちろんそんなベクの様子を見た悠宇とちかは驚きの声を上げこちらはこちらで2人固まっているという状況だったりする。


「なななななな、なんのことかの――シェアト様など知りませんぞ」

「……シェアト?さんとは?」

「誰ですか?」


 すると、沈黙はやばいと思ったのか。でも、あからさまにベクが慌てながら新たな名前を出した。というか出してしまったため。はっきりと聞いた悠宇とちかが聞き返す。


「あっ――」


 再度ベクが固まった。

 今度はまるで『終わった……』ではないが死刑宣告を受けたような表情になり固まっている。石のように微動だにしていない。

 なお、悠宇もちかも何かを聞き出そうとしていたわけではない。本当になんとなく。なんとなく。ふと持ったことで、話しただけなのだが――そこからどうやら悠宇とちかは知ってはいけないことを知ってしまった様子だ。

 再度のベクの硬直。

 ベクの頭からはまたまた大洪水。てかてかである。『しまったーー!!』という表情をして固まっているように悠宇とちかには見えていた。

 そしてそんなベクを見ている悠宇とちかも声をかけるのをためらっている状態で時間が過ぎていく――。

 

「――おい、なんで主役が来ない。って、ベク。悠宇殿を独り占めするんじゃないよ」


 すると、新たな声が3人のところへとやって来た。

 なお、これはタイミングがいいというのか。悪いというのか。ちなみに声の主はガクであった。そして、ガクが来たことを知ったベクはと言うと――。


「も、ももも、申し訳ありまじぇん!!」


 急にガクの前に土下座。なお最後噛んだ。そのためちょっとだけ場が和んだが――今やって来たばかりのガクは何が何だかわからない様子で。土下座するベクを見て戸惑い。そしてその近くで苦笑いをしている悠宇とちかを見て不思議そうな表情をするのだった。


「――何事じゃ?」

「その――かくかくしかじか……」


 土下座のままベクがここ数分で起こった事を簡潔に説明すると――。


「ばかもーーーん!」


 ガクの雷がベクに落ちた。

 今悠宇たちは町の外れに居るのだが。町の中まで聞こえたのでは?という雷が落ちた。ちょっと地響きもした気がする。何か魔法でも使ったかな?

 ガクはベクに雷を落とした後すぐに考え込む。

 そしてぶつぶつとつぶやいてから、悠宇とちかを見た。


「こうなっては――悠宇殿ちか殿。早急にわしの家に」

「あっいや――」

「私たち何も――」


 その一部始終を見ていた悠宇たちはもちろんこれは絶対面倒事だろう。ガクの雰囲気からこれは絶対関わってはいけないことに突っ込んだと思った悠宇とちかは聞いてないふり――をしようとしたが。もちろんそんなことは無理である。

 もう2人とも両足突っ込んでしまっていた。


「早く来てくれ。ベク。ベクは先にコールへ警戒をするように一応伝えてこい」

「は、はい」


 ガクに命令されるとベクはつまずきながら大慌てで町の中へと走り出す。


「早く行け。とっとと行け。急げ」


 そんなベクを見ながらガクはさらに急がせていた。


「はい!」


 ガクの言葉でベクがさらにスピードをあげ町の中へと走っていく。

 慌てているからか。なかなかのスピードであった。通常のお爺ちゃんではあそこまで早く移動できないだろうな――と、悠宇とちかは思いながらベクの後ろ姿を見ていたが。そのあとすぐ悠宇たちもガクに連れていかれるように町の中心。ガクの家?らしき場所の室内の奥。それはそれは奥深くまで連れていかれることになるのだった。

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