第184話 唐突な異世界デート?
「……」
「……」
「――いい天気だな」
「……で、ですね」
大自然。草原のど真ん中に伸びる真新しい線路のそばにたたずむ2人の影。
突然の状況で何を話せばいいのかわからなかったのだろう。
そんな中2人の影のうち男の方がふと空を見ながらつぶやいた。なお、少し戸惑い?が声から感じられなくもない。
そして同じく戸惑い?動揺?していた女の方も男の方が口を開いたためか。やっと時間が動き出したかのように口を動かした。
「俺たち。なんでこうなった?」
「――えっと、一歩下がって皆さんの様子を見ていた結果?ですかね――」
「認識は同じか。いや、マジで――その戻って来るよな?」
「――普通誰か気が付いてくれると思うんですが――恐ろしいことに?と言いますか。驚くべきことに?気配はないですね」
「――どんどん静かになっているもんな」
草原のど真ん中で話す男女。
その名を尾頭悠宇。海浜ちか。という。
並んで立っていると兄妹――などと誰かが言うと片方が怒る場合があるので、並んで立っているとよき――――身長差のカップルの後ろ姿。と、言っておこう。
そう、悠宇とちか。何故か草原のど真ん中に放置されていた。
つい先ほどまでたくさんの人が居たはずで、目の前には機関車もあった。
しかし今は静か2人の話す声のみ。耳を澄ませば線路から音が聞こえ――なくもないが。もうわからないレベルだった。
つまり機関車は相当遠くへと行ったことを意味する。
しかし2人はまだ地面に足を付けている。
「普通海楓は気が付くだろ。あと――なんやかんや言っていたシェアトも」
「ですよね。でも――なんでですかね。ま、まあ1人っきりよりは良いですが……」
少しもじもじしながら、ちかがつぶやく。置いて行かれた――という割には嬉しさを隠しているようにも見えなくもなかったりする。
「1人だったら――まあ、うん。だな。でも1人なら1人でとっとと杜若の駅戻って元の世界戻るかもな。かなり歩かないとだけど――線路はあるし」
「えっと――今2人ですが。2人の場合は?」
悠宇が1人の時の事だけ話したので、気になったちかは悠宇に確認してみる。
「まあ相手によるというか。今はちかだからどの選択肢もできるが。もしシェアトだったら何が何でもガクさんらのところ行かないとだし――」
「まああっちに連れ帰ったら――大変そうですね」
「ああ、居付かれるな。向こうの世界に変えれても生活がままならなくなる」
「――居付く。それは困りますね――私も」
「うん?」
一瞬ちかは別のことを考えたのだが――すぐに頭を振り。話を戻した。悠宇も引っかかることがあったが。ちかがすぐに話を戻したため。再度聞くことはなかった。
「あっ、いや、なんでもって、今は私と2人ですが?」
「あー、ちかの場合は。ちかのしたいようにだな。杜若に向かっても良いし多分距離的には歩いてこれる?実りの町に向かってもだし」
「そういえばおじいちゃんたち歩いてきた言ってましたね」
「ああだから実りの町の方が近いと思うが――でも海楓放置で帰るという選択肢もある。海楓なら1人でも問題ないだろうし。そもそも俺たちを放置している時点で、こちらも放置しても問題なさそうだし」
「――ここ最近ブラック?海楓先輩をよく見ます」
「だからあれが本来の姿。学校がおかしいだけだ」
「――悠宇先輩の苦労が分かってきた気がします。長年お疲れ様です」
こんなところで海楓について理解しあう悠宇とちか。
2人でため息をついた後、一呼吸おいて悠宇がまた話し出した。
「だろー。って、どうするよ?ちか」
「えっと――どうしましょうか?」
「まあ時間は――まだ気にしなくていいだろうな」
「ですね。こちらにいる時はほとんど向こうの時間は進んでないと考えていいと思いますし」
「っか、海楓の奴戻ってこないってことはろくな事考えてない気がする――うん」
「あー、なんと言いますか――」
「「2人だけにしたら、何か起こりそうだし。こういう時仲間とはぐれるってあるよねー。よしやっちゃおう!とかだな(ですかね)」」
「えっ?」
「ほぇ?」
つい先ほど海楓について理解しあったからか。奇跡的なほど声が重なった。考えが一致した悠宇とちかは驚き、互いに顔を見合うのだった。
ちなみにこの2人の考えかなりいい線をいっていたというのは――2人は知らないことである。
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