第114話 送る

「――海楓の料理か」

「大丈夫ですかね?」

「いや――」


 海楓の家を後にした悠宇とちかは先ほど海楓の家を出るときに聞こえて来た海楓の声について話しながら歩いていた。


「あっ、でも異世界というのか。向こうの味と意外とマッチと言いますか――シェアトの口には合う可能性ありますよ」

「……あるのだろうか?あーでも、時たまあたりもあるだろうから――って、関わらないでおこう。関わったら死ぬ」

「死ぬは言い過ぎ――なのか微妙ですね」

「だろ?」


 ちなみに海楓の作るもので――死人は多分でないだろう。

 腹痛とかそういうもののちょっと強い出る――または意外と何もないかもしれないが。それは――運次第である。


「まあ何か飛んできてもですからね」

「ホント、なんで学校モードが継続できないのか」

「――それだけ悠宇先輩の前ではリラックス――ってことですかね?」

「それを言うなら最近はちかの前でもだな。というか、シェアトが馴染むの早すぎてびっくりだわ」


 悠宇はまだ実は知り合ったばかりの別世界。異世界の姫様を思い出す。

 怒涛の――というか。いろいろあったな――などと悠宇が思っていると、ちかが話を続けた。


「ですね。もうなんかずっと一緒に居るような感じでしたね。ちょっと悠宇先輩には近すぎる気がしましたが――うんうん」


 話ながらちかが何やら決心?をしていたのだが。悠宇は悠宇でいろいろ思うことがあり。ちかの様子に気が付くことはなかった。でも一応話は何とか聞いていたので、返事をする悠宇。


「――はいはい。って、コールさんにこっちに居る事伝えておいた方がいいのかなーって、伝えていいものなのか。なんかいろいろあってもうわからんが――」

「あー、とりあえずこっちに居ることは伝えた方がですよね?もしかすると、コールさんが戻って来ていて、シェアトが居なくて――誘拐されたとかで大騒ぎになっていたりして?」

「それは――大丈夫じゃないか?」


 全く大丈夫ではない。

 すでにわかっている人も多くいると思うが。向こうの世界とこちらの世界。時間の流れが全く違う。というか、悠宇たちも気が付いていることなのだが。いろいろありすぎて頭の中もパニックらしく。ちょっと勘違いしていた。向こうの世界に行っていても時間はゆっくり――だからこっちにシェアトが居てもと勝手に思っていたが。正確には向こうの世界。シェアトの世界に悠宇たちが行っている時。向こうではそこそこ過ごしてもこちらでは時間がほとんど過ぎていなかったのであって、シェアトがこちらに数時間も居れば、向こうでは――である。


 現状を簡単に言っておくと、シェアトが悠宇たちのところへと来てから数時間経過しているのだが。向こうでは数でに数日数十日時が経っていたりする。

 そして、ちかの言ったようにコールが勘違い――というべきなのか。実際いなくなったので正しい行動というのか。機関車を再度ぶっ飛ばし。ハンドルを折り。転覆などなどということがとっくに起きていたりする。

 なお、悠宇のレイアウトでも同じことが起きているのだが。もちろん悠宇とちかはそんな事知らずに歩きながら話していた。


「まあ戻ってきているかもわからないが――まああとで見ておくか」

「それは悠宇先輩におまかせして――じゃ、私はここで」


 少しは話しながら歩いた悠宇とちか。

 曲がり角へと来たところでちかが自分の家へと歩き出したが――悠宇も自分の家ではなく。ちかの方へと足を進めていた。悠宇の行動を見たちかは少し嬉しそうな表情をしてから――一応。一応、確認ではないが。悠宇の行動の確認をした。


「――あれ?悠宇先輩?なんでこっちに?」

「いやいや、いつものことだし送るよ。暗いし」


 悠宇はちかがいつもの事なのになんで1人で帰ろうとするかな――などと思いつつそのまま歩いた。


「――えへへっ」


 なお、ちかはちかで一応確認しただけで、本当は今日も悠宇が送っていってくれるだろうと思っていたので、もう少し一緒に居れるということが確定すると。暗くてもわかるくらいにやけていた。


「めっちゃにやけた」

「にやけてないです!って見えないでしょ」


 いや、実は街灯があり普通に見えていたりするが。嬉しかったちか。そんな事すらも気が付かず。悠宇だけを見ていた。


「いやいや、って、遅くなる前に行くぞ。すでに暗いが」

「――はーい」


 そして少し小走りで開いた距離を縮めるちか。

 それからもう少しの間。ちかの家に着くまで悠宇たちは今日の事などを話しながら歩いたのだった。

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