第129話 神社
夜の神社。
そこは人影もなく静かな場所。
そんなところに気が付けばやって来ていた悠宇とシェアト。
少し前までのバタバタ。騒がしい感じは今はなく。シーンとしている。
悠宇とシェアトも一息ついて落ち着いたところだ。
ちなみに鳥居の前に立っている。
なお、先に言っておくが。神社にやって来たからこちらの世界でもなんか起こってしまう――と、言うことはない。
――今のところない。
「ここは何?家――にしては暗いわよね?」
周りを見つつ悠宇に聞くシェアト。
「ここは神社だな」
「――じんじゃ?」
悠宇の返事に不思議そうに首を傾げるシェアト。そして薄暗いが電気の付いている本殿。賽銭箱などがある方を見ている。
「そう。シェアトのところには――ない?かな」
「ないわね。初めて聞いたわ。というか。なんというのか。このあたりだけ空気が他のところと違う気がするわ。その穢れがないというのか――何かしらね?とにかく落ち着く気がするわ」
安全と感じたのか。シェアトはここで深呼吸をする。
そんな様子を見ていた悠宇は『のんびりできそう――』などと一瞬思ったが。現状を思い出した。
「そういえば。というか。もう一度だけどさ」
「うん?」
「シェアトはとりあえず海楓から逃げてきたと」
「もちろん。悠宇と子供との子を作る前に死ぬなんてありえないわ」
「だからそこまで戻らなくていいのだが――って、それは今のところ置いておいて」
「そうね。さすがに外では――ね」
「はいはい。シェアトちょっと静かに」
「何よ」
またまた余計なことを言いそうになったシェアトを軽く止めてから悠宇は話を進めた。
「えっと、シェアトが――まあ絡まれていたというか。あの場所に居たのは海楓知らないよね?」
「ええ。こっそり脱出したんだから。あんなの食べさせられたら私今ここに居ないわ」
「そこまで――なことは、あるかもしれないけど。今回は見ていないから何ともか――って、つまり海楓が心配していると」
すると、悠宇が確認をした瞬間。ドンピシャのタイミングで悠宇のスマホが鳴った。
悠宇はすぐにスマホを確認。
相手は――海楓。そしてシェアトが居なくなったことを伝えてきていた。
悠宇のスマホには『シェアトが悠宇に会いたくて飛び出していったみたいだけど、知らない?』と、書かれていたが。悠宇はこれは伝え方を変えようと少し画面を見て考えていると――シェアトが不思議そうに悠宇の持っているスマホを見つつ話しかけてきた。
「――悠宇?そういえば――それは何?」
「えっ?あー、これは――まあスマホ。って、まあ通信機器?みたいな」
とりあえず、『一応無事を確認』と、詳細は書かずにさっと悠宇はスマホを操作してからシェアトへと返事をした。
「通信機器――?えっと……遠くの人と連絡取り合うみたいな事かしら?」
「そうそう、ってこの話もちょっと置いておいて。シェアト。海楓から心配の連絡来たからとりあえずて――海楓のところ戻るか」
悠宇は海楓からの言葉を少し?変えてシェアトに伝えたのだが――。
「嫌よ!」
「即答!?」
即海楓のところへと帰ることを拒否するシェアトだった。
そしてシェアトと悠宇がその際に少し大きめの声でやり取りをしたためか。少し離れた茂みでガサゴソと、何かが動く気配があった。
「うん?」
「悠宇。今何か居たわ」
あたりが静かだったこともあり。悠宇とシェアトはともにその音には気が付いた。そして2人は音がしたと思われる場所の方をジーっと見る。
そこは2人のいる神社の敷地内。木々と少し背丈のある草が生えている場所で特に明かりなどがあるわけではないので真っ暗だ。
「――猫かなんかじゃないか?」
音はしたが特に姿を見ていなかった悠宇がそんな返しをシェアトにしたのだが――それがまずかった。
「なっ!その声。やっぱりおとんじゃないか!」
再度ガサガサと音がしたと思うと。茂みのところから人が飛び出してきた。
普通なら驚くところ――だったが。少しだけ距離が離れていたことと。声が聞こえた時点で悠宇は頭を抱えていて驚く暇などなかった。
ちなみにシェアトは悠宇の後ろに隠れるような形で立っていたので、悠宇の背中越しだったから。なのか悠宇と同じく特に驚くことなく。
「――マジかよ」
「悠宇。知り合い?」
呆れている感じの悠宇に声をかけるのだった。
「――知り合いとは答えたくないなー」
なお、悠宇はシェアトに返事をしつつ『一番知られたくないやつに――』などと思いつつ顔をあげるのだった。
ちなみに悠宇が顔をあげるとよくよく知った姿が近付いてきていた。
隠すことはないだろう。
悠宇とシェアトの前に現れたのは獅子である。
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