第22話 チートじゃないですか!?
動きそうで動かない蒸気機関車の運転席に居る悠宇と海楓とちか。すでに悠宇が海楓とちかと合流してからでも数時間が経過していた。
「どうするんですかー。ほんと」
3人がそれぞれ蒸気機関車を動かそうとしたが何も起こらない。
今は悠宇が遠くを見て考え。
海楓は運転席に座り前を見つつ考えている。
そしてちかは先ほどから石炭?と、思われるが結局何かわかっていない石。とりあえず石炭ということになっている濃い赤色の何かを手に取っていた。
「ちか。その石炭?みたいなやつあまり触らない方が良くないか?なんか石炭――ではない気がするし。見知らぬものを触るのはリスクかと」
「それはそうですが――これめっちゃ綺麗じゃないですか」
悠宇の忠告を聞きつつも手に持っている石炭?の不思議な感じに惹かれ見るちか。
「まあそれはわかる。石炭って黒のイメージだが。それ――赤?」
「ですね。濃い赤色に見えるような――実は宝石でこのSL動くんですかね」
「いやいや宝石――ではないと思うがもし宝石ならこの蒸気機関車の燃料やばいな」
ちなみにもし宝石で走るのならば無暗には走らせることができない超高額鉄道となるだろうが。あながちこの2人が話している事外れているが――でもそこまで外れていない内容だった。
その答えがわかるのは――もう少し後の事。
「もし宝石なら――これ売ったら億万長者になれたりして……おお。ちょっと期待できなくも。悠宇先輩。何もできることがないならこれ調べましょうよ」
「あのな」
石炭?らしきものを手に持ちながら目を輝かせるちかを見て悠宇が呆れる。すると、すぐにちかは「冗談ですよ」と、言う手振りをしつつ。
「嘘ですよ。まあちょっときれいな石炭?ってことにしておきましょう。でもたくさんあるみたいですし。もし持っていっていいなら欲しいですね。向こうでは高額かもです」
「ちか。嘘ですとか言いながらめっちゃ売る気じゃん」
「えへへ――だって――なんかこの雰囲気現金化出来たらすごいことになり――ふぇ!?」
ドサッ。
「えっ?」
「うん?なんか落とした?」
すると、突然ちかの持っていた石炭?と、思われるものが姿を消し――消えたと同時にちかの手のひらにはボロ布?で作られたみたいな巾着袋が現れた。
「――――――――えー!?石炭が変わった!?って、なにこれ。重い――重い!?」
急に手に持っていたものが変わったちかは大慌て。
「ちょ、ちか、何をしたんだ?」
ちなみに変わる瞬間を見ていた悠宇も少し慌てている。
「いやいや、わかんないですよ。って、悠宇先輩ほんと重くなりました。ってこれ――怖いです。あげますあげます。受け取って早くー」
「いやあげますって中身は?」
「わかんないですよ!悠宇先輩はい。はい!」
さらに慌てながら急に自分の手の中に現れた巾着袋を悠宇に無理矢理渡すちか。悠宇は渡されるがまま手にする。
また海楓も興味ありげに悠宇の持つ巾着袋を見ている。
「なんで俺が――って、ジャラジャラしてるな」
「悠宇先輩が中見てくださいよ」
悠宇に巾着袋を渡したちかは手を払いながら悠宇に開けるように言った。
ちなみに特に手が汚れたとかではないが。触れてはいけない物を触れたようにちかは感じていた。
悠宇はしぶしぶ騒ぐちかから受け取った巾着袋の紐を緩める。
「――えっ」
一番初めに巾着袋の中身を確認した悠宇はさらに驚いた表情をした。
「あっ」
驚く悠宇に続くように悠宇の手元を覗き込んだ海楓も驚きの声を出す。
「な。なんでした?」
最後にちかも恐る恐る悠宇の手元を覗く。
3人の視線が集まる先には――薄く丸い形をし。表面には何か模様らしきものが見える金色の物が8割ほど。そして少し金色より小さめの同じく薄く丸い形をした銀色、銅色のものが1割ほど。ちらちらと見えていた。
「いや、これってよ――お金――?金貨か?」
巾着袋の中身を1つ取り出す悠宇。巾着袋から取り出すとそれは太陽の光を浴び輝く。まるで今作られたみたいに綺麗だった。
「多分お金になるんじゃないかな?それと金貨だけじゃなくて――銀貨もない?ほら、こっちは銀色」
「お金――えっこのちょっと茶色――銅?みたいなのもって――なんで急に石炭?がお金に……?って、もしかしてこれ……私が何かしました?」
海楓とちかがそれぞれ銀色のもの。銅色のものをそれぞれ巾着袋から取り出し眺めながらつぶやく。
「――まあ気になること言えば、今さっきちかが現金化とか言った瞬間だったよな」
「あっ、確かに言いました」
「もう1回してみるか」
「はい」
悠宇に言われるとちかは再度石炭?らしきものを手に取る。そして『現金化』とだけつぶやくと――。
ドサッ。
先ほどと同じくらいの巾着袋がちかの手に現れた。もちろん手に持っていた石炭らしきものはなくなった。
「「「――」」」
再度となるが。石炭らしきものが巾着袋に変わる光景を目の当たりにした3人は少しだけマジマジとその様子を見てから――。
「ちかの能力はものをお金に変える力?まあこれが本当にお金ならだが。とりあえず金銀銅に変えれると――」
「マジですか。私億万長者?」
「えー、なんかいいなー」
「悠宇先輩もっとしてみていいですか」
「いや、ちか待て待て」
「なんですか?」
「石炭1つでこの量ってか、そもそもその石炭らしきものが何かはっきりわかっていないのに全部金貨とかに変えるのはやばくないか?なんか石炭言ってるがマジで宝石のレベルの可能性ってか――とりあえずちか。逆はできるのか?」
「逆?」
「金貨を石炭にだよ」
「なんでそんなことを――?」
「一応だ」
「えっと――現金化の反対だから――石炭化?」
悠宇に言われるがままちかは手にしていた巾着袋を見ながらつぶやいたが――今度は何も起こらず。巾着袋のままだった。
「ダメですね」
「つまりはだ。ちかの能力は金貨とかにするだけ――戻すことはできない可能性がある」
「――なんか悠宇がこの場所。環境に馴染んでいる?」
悠宇とちかのやり取りを見つつ海楓がつぶやく。
「確かに海楓先輩の言う通り悠宇先輩落ち着いてます?ってか適応してます?」
「いや、なんか直感でそんな事ふと思って――」
「悠宇の真面目さが影響してるのかな?って、悠宇とちかちゃんに不思議な力があるなら私も絶対あるでしょ」
「なら海楓も何かつぶやいてみるだな。ちかは――たまたま?」
「たまたまです。ほんとたまたま口にしただけですね。何か直感とかはなく」
「だとよ。海楓」
「えー、じゃあ――って、何も浮かばないー」
なお、このあと海楓はいろいろ呟いていたが――何も起こらなかったのだった。
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