第67話 フライングピンポン ◆
「ある日ー森の……中ではないか。ここは――田舎?いや、俺の家も田舎だが――まあ、おとんとこよりかは家多いかなーって、おとんの家どこだっけ?おとんの家に行けばもれなく女神様にも会える――いや、女神さまの家にお邪魔することも可能かもしれん。しまったー。もっと服装考えればよかったー!」
茶髪のボサボサ頭の男性が1人で何やら言いながら。そして叫びながら歩いているが。幸いにも畑多めの道を歩いているため。周りに人が居ない。なので、通報されるようなことはないだろう。
現在は休日の朝。平日なら学校にそろそろ向かって――1限が始まる。といった時間――。
「あー!手土産もなんも準備してねーじゃん!」
……。
今度は頭を両手で抱えながら叫んでいたため。もしかすると、家の窓から茶髪のボサボサ頭に気が付いた人が不審者として通報したかもしれない。
しかし男性はそんな事気にもせず。今は自分の犯したミスを悔やんでいた。
今日の茶髪のボサボサ頭の男性の予定は、友人宅に突撃訪問。
かれこれずっと1人暮らしを隠している――いや、1人暮らしというのは隠していないが。家を引っ越した。自分の家を持った。と、聞いた時からなかなか家へと招待をしてくれなかった友人宅に事前連絡なしで向かっていた。
ちなみに場所はなんとなーく。知っている。というレベルで歩いている。のだが。今は友人宅を探すより。友人宅の近くに住んでいる学校の女神様のことで頭がいっぱいになり。
目的地であった友人宅を今茶髪のボサボサ頭の男性は通過した。
「女神様が居る可能性あるって知ってて俺なんで準備してねーんだよ。馬鹿じゃん。いやー、この辺コンビニないのか?コンビニのお菓子くらい持って行った方がいいよな?絶対その方が好感度高いよな。いや、でも必ずいるとは限らないか――おとんにお菓子持って行ってもなー。なんか違うな」
いろいろ呟きながら歩いていく茶髪のボサボサ頭の男性。
どんどん目的地は遠ざかる――。
「あー、でもこんな時間に居ることはないか。まさかおとんの家に泊まり込んでいるとかないだろうし。いや、女神様のことだとおとんの世話を完璧にしている可能性も――女神様だから。なんでおとんばかりなんだよ。なんかムカついてきたな。よし。ここは俺ができる男というのを女神さまにアピールしよう」
足を止めて1人決意を胸にやっとあたりを見回す。
「――あれ?おとんの家――このあたりじゃないか?なんか聞いていた話だとボロの家があるはず――って、あれじゃねーか?通過してるじゃん。何してるんだよ俺」
そして運よくというべきだろう。茶髪のボサボサ頭の男性は、目的地の家を発見しUターン。
見た目ボロの家の前に来た茶髪のボサボサ頭の男性は表札を確認し。目的地であることを再確認した。
「間違いないな。ここがおとんの家。なんつーか。冗談かと思ったが。マジでボロだな。でも――家持ってるってすげーよな。まあ俺なら城持ちたいが。って、まずピンポン」
男性はすっと、インターホンを押す。
しかし――反応はない。
「うん?寝てるか――?」
男性は数回インターホンを押すが――室内から反応はない。
「おとん休みは寝坊か?何して――って、まさか女神様と一緒に居るんじゃ――いや、女神様の家に。どこだ女神様の家どこだ?って、そうだったー!俺手土産探しに行ってから来るんだった。って、後着替えてもねー!じゃ、おとん。また来る!」
――嵐が去った。
茶髪のボサボサ頭の男性は1人で勝手にいろいろ言い。そしてインターホンを何回か押した後。ダッシュでおとんと言っていた友人宅を後にしたのだった。
もう男性の後ろ姿は小さくなっている。
ちなみにこの後茶髪のボサボサ頭がこの場所へと今日戻って来ることはなかった。
また、茶髪のボサボサ頭の男性が訪ねてきていた時。その友人。おとんと言われていた人は――この世界にはいなかったが。それを茶髪のボサボサ頭の男性がそんなこと知るよしもなかった。
なお、茶髪のボサボサ頭の男性が再度この場所を訪れることがなかった理由は、単に買い物をしていたら別の友人たちと遭遇。そちらにたくさんの女の子が居たため『今日はこっちの方が楽しそうだな』と判断したからだった。
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