第76話 再出発
食事の際に決まったことによりコールはこの後1人で実りの町へと戻ることになった。
というかシェアトが『私の命がかかっているんだから早く行って』という主に追い出したいがために言った言葉によりコールはしぶしぶシェアトの命令を聞いたという形だったりする。
実際食料が尽きればこの杜若の地には何もない(まだ悠宇の家と繋がっているということはバレていないため)。ちなみに水だけは少し離れたところ。朽ちた巨木の奥にあったが食べれそうなものはまだ見つけていないのも事実。なので、シェアトの言うことも――だったので、コールは休みもほぼなしの状況だったが。出発に向けて準備している。
なお、以前の逃走中。実りの町へと避難している時は数日間まともな休みなくということもあったらしく。コール的にはこれくらいは全く問題ない。しいて言えばシェアトを置いていくというのが大変心配だったりする。間違いなく悠宇たちに迷惑をかけることが必須に見えていたからだ。
けれど今は一応今は緊急時コールは無駄な考えを頭の中から追い出し――たかったが。周りを見るとそれがなかなかできないのも現状。
なぜなら杜若の地に居る限りは緊急には全く見えないからだ。
現在の杜若では誰かが攻めてくる。何か気配があるということは一切なく。穏やかな時間が流れている。現に一応身の危険?が予想されているシェアトは外で無防備にもうとうとしているような状況でもある。
けれどシェアトに言われたことを。自身の任務を遂行するため。何度も何度も自分に鞭を打ち。余計なことを考えないようにせわしなく動き再出発の準備をしていたのだった。
「よいしょっと」
コールが機関車の車内に置いてあった荷物を駅舎内のベンチに置く。
コールが出発するからと言って、特にこちらから何かを持って行くということはないので、実りの町から持ってきたものを機関車から杜若の駅舎。唯一の建物内へと運んでいるところだ。
「コールさん。荷物は以上ですか?」
そしてそんなコールの手伝いをしているのが悠宇。
なお、悠宇は手伝いと言うより。自分の家へと繋がっているドアに気が付かれないようにと――というミッション中だったりする。
しかしコールはそんなことには全く気が付くことはなく。荷物を下ろしていた。
何故なら、今コールの中ではとっとと戻り。とっととと荷物を。そして悠宇の能力がどうなっているか。実りの町から新しい線路が出来ていたらそれを確認し。シェアトに報告――というこの後の流れを作り動いていたからだ。
「そうです。これで向こうから持ってきたものは終わりです。少ないですから」
もともと荷物は少なかったため。すぐに荷物の移動は終わる。
すると、それを待っていたのか。コールをとっとと追い出したかったのか。シェアトが建物の中へとやっていた。
シェアトの後ろには海楓とちかも付いてきている。
「じゃ、コール。ゆっくりでいいから」
「すぐに戻ってきます」
「ゆっくりでいいから」
「シェアト様1人は嫌な予感しかしませんので」
「ゆっくりでいいから!」
そして始まる謎な言い合い――を悠宇たちは見せられた後。コールはやれやれといった感じをしながら機関車の方へと向かい。運転席へと乗り込んだ。
「では、悠宇殿しばらく借ります」
「どうぞ」
「そしてそのわがまま娘をお願いします」
「ちょっと!?なんかサラッとコールが酷い事言った気がするんだけど!?訴えていい!?」
「――訴えるってことはこっちにも裁判――的な事あるんですかね?」
出発前に再度始まるコールとシェアトの言い合いを悠宇が見ていると。ちかが小声で悠宇に話しかけた。
「――まあ意外と同じような感じというか。そういう決まりもあるのか。単にガクさんに言うという意味なのか――」
「あー、そういうこともありますよね」
ヴォォォォォー。
それからさらに少しコールとシェアトは言い合いをしていたが。さすがに動かなければ何も始まらないため。コールが呆れつつも話を切り上げ。そして汽笛ならし。機関車を出発させた。
「――では次こそ行ってきます。悠宇殿、海楓殿、ちか殿。シェアト様をお願いします――うわぁ……本当に簡単だ――」
そして悠宇たちに挨拶のち。コールの驚きの声が聞こえた後はあっという間にスピードを機関車があげていったので、コールの声は聞こえなくなったのだった。
多分あれは早く帰って来るためだろうと残された4人は同じことを思うのだった。
しかし、コールにとっては、先ほどのシェアトのやり取りを最後にまさか1か月以上もシェアトの姿を見ないことになるとは、この時は思いもしていなかったのだった――。
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