第7話 駅前(7)
丁度コンビニの前だった。
清掃が終わった店員が物問いたげに私を見たので、ゆるく顔を背けて踏みしめるように左に曲がる。
「バス停のベンチがその先にあるんです。少し、休んだ方が……」
男が私の前に回りこみ、そんなことを言う。素早く周囲に視線を走らせた。皆、駐輪場が多い西に向かったようだ。ありがたいことに今、この場には誰もいない。
「バス停の場所ぐらい、知ってるわよ……っ」
男をにらみつける。怯えたように男は首を縮めて私を見た。
「誰のせいで……」
そう言おうとして、口を閉じた。
まじまじと、男の顔を見る。
男は戸惑ったように私を見返していた。よく見ると、どこか綺麗な顔立ちをしている。全体的に線が細いせいもあるのだろう。
私の好みか、といわれればそうではない。
だけど。
だけど、だ。
「……まさかと思うけど、幻覚じゃないわよね」
自分で呟き、心と脳の芯が冷えた。
さっきまで彼は幽霊だと思っていたが、これは実は私の妄想ではないのか。
幻覚ではないのか。
私の中で作り上げた何かではないのか。
統合失調症、慢性疲労症候群、脳障害等いろんな病名が頭に浮かぶ。
年齢的には問題ないだろうが、まさかレビー小体型認知症ではあるまいかとさえ思った。つい最近、レビー小体の利用者さんからリアルな幻視を聞いたからかもしれない。
「僕、幽霊です!」
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