第152話 ローテーブル(2)

「夏とおんなじぐらい、冬が忙しいのよね……」

 自分のスケジュール帳を眺めてため息を吐く。


 デイサービス勤務の時は、ある意味カレンダー通りだった。だけど、ボランティアセンターに異動してきてからは、とにかく土日は行事ごとが入るし、夏や冬など学生が長期休暇に入る時はイベントが入る。


 時期は今、十二月。ちょうど、忙しくなってくるのだ。


 おまけに、提案した福祉啓発イベントの企画を、「おもしろい」と冴村さえむらさんが言ってくれて、現在起案が総務で回覧されている。あの企画が通れば一気に忙しくなってくるはずだ。


「準備だけしてくれてたら、荷入れは僕がしておくから。午前中ならいつでもいいよ」

 総君がローテーブルの各種資料を眺めながら苦笑する。総君の勤務時間はお昼の十二時からだから、確かにそれは可能なんだけど。


「……私もその場に居たいしなぁ」

 思わず呟く。家具の配置を一度間違えたら、今度私と総君とでは絶対に動かせない。あとでもめるのも嫌だし、とむぅ、と口唇を突き出して腕組みをすると、くすりと笑われた。


「なに?」

 目を瞬かせて総君を見上げると、総君はスツールに座ったまま上半身を乗り出してくる。


「その顔、変だけど可愛い」

 そう言って、キスをする。そのままラグに押し倒そうとするから、私は慌てて彼の体を押し返した。


「先、こっち!」

 ローテーブルのスケジュール帳を指さした。引っ越しだ。まずは、引っ越しの日取りを決めなければ。そう思っていたら、「そうだ」と、総君も何かを思い出したかのように目を見開いた。


「挨拶だよ」

「なんの」

 きょとんと私が総君に尋ねると、総君が顔を顰める。「ほらまた、忘れてる」。そう言って、スツールに座りなおして私を見た。


「コトちゃんのご両親に僕、あいさつに行きたいんだけど」

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