お兄ちゃんとボランティアさん

結婚式(1)

 おれが結婚式を挙げたのは、今から7年前だ。


 まず、夏菜なつなといろいろ式場やホテルを回って、挙式会場を決め、そこでウエディングプランナーという名の担当者がついた。あとは、夏菜がそのプランナーと話を詰め、日やドレス、内容を決めていった気がする。


 正直に言えば、準備の記憶はあんまりないが、結婚式当日の記憶はさすがにしっかりとある。


 式は緊張したし、披露宴では同僚と友人にしこたま飲まされてその晩はトイレに籠もって胃がひっくり返るほど吐いた。


 だけど。

 準備段階で何をしたかと尋ねられたら、首をひねらざるを得ない。


 おれの衣装だって夏菜が選んだし、参加者に振る舞う料理も夏菜が選んだ。会場を飾る花も夏菜が決めたし、引き出物も夏菜が決めた。別に押しつけたわけじゃない。おれは積極的に参加しようとしたが、夏菜が、『音葉おとははセンスがない』とおれの協力をはねつけたのだ。


 だから、会社の後輩や同僚が結婚の相談をおれに持ちかけても、「いや、よくわからん。嫁がしたから」と答えていたのだけど。


 それでも。

 そんなおれでも。


 結婚式の打ち合わせで、『結婚式運営委員長を決める』ということはしなかったと断言できる。

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