第115話 階段(3)
そう切り出したら、もうあとは惰性で言葉が溢れだした。
涙声で、そして時折ティッシュで鼻をかみながら、私は取りとめも無く
半年ほど前に、幽霊の男性に出会ったこと。
心残りは、異性と付き合ったことが無いということだ、というのでなんだかほだされて『恋愛ごっこ』をしていたこと。
この幽霊男のことが。
だんだん、好きになったこと。
この幽霊男が。
いつか別れるとは覚悟していたけれど。
だけど。
ある日、いきなり姿を消したので。
きっと魂がこの世から消えてしまったのだと思って諦めていたのに。
県立リハビリテーションセンターにいたこと。
だけど彼は、私のことを、『知らない』と言い切って無視したこと。
それら一切を、ただただ、時系列に述べた。
要約するとか、まとめるとか。
そんなことは考えられなかった。胸につかえて、わだかまっていたものを吐き出すかのように冴村さんに話し続けた。
「ひとつ、言いたいんだけど」
私が頭の中の言葉をすべて話し終わり、空っぽになって黙っていると、冴村さんがそう言った。
「はい」
力なく返事をする。まるで無重力状態のように身体はふわふわするのに、存外心は晴れた。
いや、晴れたというより。
なにもかも、無くなった気分だ。
『あんた、頭がおかしいんじゃない?』
そう言われても、何も傷つかない。それぐらい脱力し、考えられなくなっていた。
「
いきなりそんなことを言われ、唖然と冴村さんを凝視する。
「いや、マジで」
真顔で言われて私は戸惑う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます