第40話 仕事場(10)
「さてさて。今日の流れを確認しようか」
再びスライド扉が、ばいん、と開き、
「私の予定は、事務所にてボランティアさんの相手と相談業務。それから来週から始まる新規ボランティア講座の準備をする。菅原さんは?」
着替えた服を自席の下段引き出しに投げ込みながら、冴村さんが尋ねる。
「朝イチで、相談支援員業務の方で
了解。冴村さんは答えると、着替える時に多少崩れたのか、お団子を手早く直しながら私を見た。
「まぁ、私から事務所にも言っておくけど。来年度には私とボラコを代わってもらうんだから、できれば夏までに相談支援員業務は山下さんに引き継いで」
はい、と頷いたが、あの山下さんが引き継いでくれるかどうかは微妙だ。『えぇぇ』と盛大に顔を顰めて睨みつける姿が容易に想像でき、内心でため息を吐いた。
「もうすぐしたら、農作業ボラさんが来るよ」
冴村さんの声に、私は彼女を見る。
冴村さんは、淡い色の口紅を塗った口唇を綺麗に三日月に象り、腰に両手を当てて私を見ていた。
「笑いなさい。菅原さんはすぐ、それを忘れる」
慌てて頷き、自分でもぎこちないと思う笑顔を浮かべて見せた。だけど、冴村さんはそれをとがめることはない。「素晴らしい」。そう言って、それこそ素晴らしい笑顔を私に向けた。
「うちを喫茶店と勘違いしている野郎どもに、美味いコーヒーをおみまいしてやれ」
冴村さんはコーヒーメーカーを指さして片目を瞑って見せる。私はくすりと笑い、頷いた。
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