結婚式(7)
「金のことは気にするな、婿さん」
向かいの席から胴間声が響いてくる。あれだ。農作業ボランティアと名乗ったじじぃだ。
「趣味の料理サークルの炊き出し材料は、うちの農園から出すから金はかからん。皆ボランティアで出てくるから人件費もいらんしな。いつもホレ、世話になってるんだから、こういうときはいろいろ協力させてくれよ」
「いや、
「学生さんには、なんかこう、可愛らしい菓子を用意してやってくれ」
「いや、そりゃ用意しますけど」
困惑顔の琴葉に、それぞれの顧問がぶんぶんと顔の前で手を横に振る。
「うちは発表の場があればいいんで」
そう言ったのは吹奏楽部の顧問で、写真部の顧問は、
「うちは写真の題材が欲しかっただけで」
と、笑顔で腹の内を語った。
なるほど、とおれは改めて会場を一瞥する。
農作業ボラのように「世話になってるから恩を返させてくれ」というグループと、学校のように「魂胆があります」というグループに二分するらしい。
たまたまおれと目が合ったのは消防だ。
「うちは、境内で消防レンジャーの寸劇をさせていただき、啓発、周知をさせていただくことになってます」
「……消防レンジャー」
呟くおれの隣で、
「商工会は、かっしーの着ぐるみを着て、柏餅の実演販売を」
すかさず
琴葉はもう、立ったまま凍り付いている。
「町としては、こういった催しを広報等で周知しようと思いまして」
最早。
琴葉と総一郎の結婚式は、『催し』と化しているらしい。
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