第百三十話 新たな敵
スタッ、スタッ、スタッ。
スノウ達六人はノーアトューンを後にして、その先にあるであろう未開の地に向かっていた。
「ノーアトューンに長く住んでるエインズでも、この先の町か村のことは知らないんだな。本当に何があるんだろうな。」
「先輩達の師匠が大切に保管させるくらいのものなんだから、何かはあって欲しいですよね。」
「まあ、無駄足にならなければなんでもいいけどな。」
ムシャ、ムシャ。
リサとセラはノーアトューンで売られていた肉の串焼きを頬張る。
「リサさん、セラさんやっぱりよく食べますよね。もう何本食べたんですか?」
「え、あたしは10本くらいかな?」
「セラはこれが11本目!」
「私にはお二人の体のどこにその料理がしまわれてるのか不思議ですよ。」
シュンッ。
大食感であり、全く太らない二人の姿にヒメノは不公平さを感じていた。
「リサ、俺にも一本くれ。」
「はーい、あーん。」
「んっ。んー、かなり美味いな。確かにたくさん食べたいのはわかる。」
その串焼きには、甘さと塩味がいい感じにミックスされたタレがかかっており、あえて少し焦がした匂いが食欲をそそる。
「はぁー、美味しいもの食べてる時は何よりも幸せ!」
「本当に!セラ達の生きる意味は食にありって感じ!」
「食いすぎて動けなくなるなよ。」
「はーい。」
食べ歩きをしながら、地図に記された地に向け歩みを進めていた。
「あれが、ターゲットですか。全く緊張感のない集団、本当に最強の戦士なんですか?」
ホープを遠くの崖から見つめる一人の黒い服を着た者。
そして、一瞬にしてその場から消えた。
「じゃあ、次の目的地に着いたら情報を仕入れて、ノーアトューンに戻っていよいよグラズヘイムのヴァルハラに向かう感じでいいかな?」
「そうだな、セラの言うとおり武器も揃えば俺たちは本来の力を発揮できるだろうし、早くオーディンに制裁を下してやらねえとな。」
「ああ、そして少しでも多くの被害者を生み出さないようにしないと。」
「セドリックは平気か?もしかしたら、ヴァルキュリア隊の奴らとぶつかり合うかもしれないんだぞ?」
スノウがセドリックに問いかける。
「ああ、分かっている。でも、この世界にとってオーディンは危険な存在。ヴァルキュリア隊の彼女達もオーディン側につくのであれば、覚悟はできてるさ。」
「セドくん!覚悟はできてるって、ヴァルキュリア隊の人を倒すつもりじゃないよね?」
「どういうことだい?」
「前にお兄にも言ったけど、対立する人を倒すことだけが解決じゃないんだよ。分かり合える可能性が1%でもあるなら、希望を捨てちゃダメだよ。」
グイッ。
セラがセドリックの顔を覗き込む。
「……ああ、そうだね。分かった、僕にやれることを全力でやってみるよ。」
「そう!そのためなら、セラ達も力を喜んで貸すからね!ね、みんな!」
セドリックを他の五人が笑顔で見つめる。
「ありがとう、僕も頼らせてもらうよ。」
セドリックは誰かを頼ることを学んでいた。
これは、彼の成長である。
スサーッ。
彼らの髪を風が揺らす。
「っ?なんの音?」
「ヒメノ、どうした?」
「なんでしょうか?何かが向かってくるようなーー。」
ブンッ!
何かがスノウ達に飛んでくる。
「危ない!
バギーンッ!
飛んできた斬撃のようなものをサマーソルトで砕く。
「敵!?」
「全員戦闘態勢をとれ!」
ガチャッ。
スノウの掛け声で全員が武器を構える。
「一応、本物でしたか。最強の戦士であることが確かめられてよかったです。」
「誰ですか、あなたは。」
ギリッ。
ヒメノの目が鋭くなる。
「私はあなた達を排除するよう命令された。けど、初めに挨拶したい人がいるんですよね。」
「私たちを排除……あなたもエーリュズニルで会ったトップの一人なのですか?」
「ああ、オリジナル1のことですか。まあ、同じではありますが、彼ほど不完全ではありませんね。」
「あなた、六対一で勝てると思ってるの?セラ達が誰かわかってるなら、対策ぐらいはしてるんだよね?」
ブワンッ!
黒い者は目にも止まらぬ速さでセラに接近する。
バギーンッ!
刀で受け止めるが、そのまま押し進められる。
「くっ!?」
「私のターゲットはあなたですよ、セラリウム!」
「セラ!!」
ズンッ! ドゴーンッ!
空に闇のオーラが生まれ、そこから今まで見たことないサイズの化け物が出てくる。
「なんだ、こいつ?」
「……サイクロプスだ。」
「セドリック知ってるのか?」
「ああ、王国にいる時に近くの町を30分で壊滅させたと言う報告を受けた。その後は、急に消息を絶ったと聞いていたけど、まさか王国で隠してたのか。」
サイクロプス……全身群青色の10mはある巨人。
片手に大きな斧を持ち、大きな牙と一本角も特徴的。
二つの大きな目をぎょろつかさている、マッスル全開の化け物。
スノウ達は新たな刺客に襲われていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます