第十一章 英雄は、過去の傷に触れる

第六十六話 村への旅路、自信とは

ホープはトップの十年間の修行を行なった村、に歩みを進めていた。


彼らの消された十年間の記憶、そのかけらの多くが眠る場所。



それは、セクヴァベックの町から五時間ほど歩いたところにある。


早朝に出発した彼らは、少し話し合いをしていた。



「ユーダリルに行って分かることっていったら、と、あたりか。」

「お兄のいう通りだろうね、でも、セラとお兄以外の正式名称フルネーム分かったら、かなりの収穫だよね!」

「そういえば、セクヴァベックの時に使ってた兄さんのあの力は何だったんですか?」


ヒメノはロキを退けたスノウの力について尋ねる。


限界突破オーバードライブとは少し違う、半分スノウで半分フェンリルの姿を思い起こす。


「ああ、あれは正直俺にもまだ分からないんだ。ただ、直感的に言うと、限界突破オーバードライブは、俺がフェンリルと。セクヴァベックの時のは、俺とフェンリルが気分だった、ってところだな。」

「僕の目にもあの姿は、スノウとフェンリルが半々に映ってた。そして、スノウの意思で動いてもいた。」

「まだまだ、あたし達のこと分からないことだらけだね〜。」


これからのことを話しつつ、ホープは毎度恒例昼飯を作り始めた。



スノウとリサが食材を切り、セドリックとヒメノが料理をしていき、セラとユキナが席を準備する。


「リサ、肉はこのサイズでいいか?」

「うん!あと野菜はこれくらい大きい方が……。」

二人の姿をユキナは遠くから見つめる。


「ユキちゃん!どうしたの?」

「え、いや、何でもないです。」

「セクヴァベックで二人行動してる時に、お兄に何か言われた?」

「いえ、大したことは……。」

ユキナは俯く。


その顔は少し物寂しそう。


「まーた、お兄は女の子傷つけたんだね!後でお説教をーー。」

「違うのセラさん!あたしが勝手に……。」

「女の子にそんな顔させる時点で、お兄は男としてダメダメなの!!」

セラはユキナの頭を撫でる。


「セラさん、やっぱり優しいですね。先輩のような落ち着きを与えてもらえます。」

「え!?それってセラが男っぽいってこと!?」

「違いますよ!先輩と似て優しい人なんだなって話です!」


セラは少しイタズラ顔で微笑む。


「分かってるよ!ユキちゃんはいじりがいがあるからさ、ついつい。」

「もう!……あの、セラさん、今の自分に

「自信??」

セラは腕を組み空を眺める。


「うーん、あるっちゃあるかな。」

「すごいですね、やっぱりセラさんは強い人ーー。」

「逆だよ、ユキちゃん。」


グンッ!

セラはユキナと真正面から向かい合う。


「はえ!?」

「セラはね、なの。弱いからこそ、少しでも強くありたいと願うからをしてるの。」

「自信を持つ努力……。」

ユキナはセクヴァベックの時にスノウから言われたことを思い出す。




「なあ、ユキナ。もしもの話だ、俺がこの先暴走したら

「え?それはどういう……。」

「俺たちは最強の戦士だった。……けど、何も代償なしにこの力を手に入れられたとは思えない。日頃から冷静なユキナだったら、もしもの時任せられるかなってな。」


スノウは空を見上げ、悲しげな顔を浮かべる。


「それは……。私はーー。」

「悪い、変なこと聞いたな。俺たちも情報集めようぜ!」


ザッザッザッ!

スノウはユキナの手を引き、町で情報を集めた。


ユキナの心の中には、引っ掛かりがあった。


(私が、先輩に武器を向ける……)




時は戻り、


「私は、怖かった。先輩にもしものことがあったら、武器を向けられるのかなってーー。」


ズサッ!

ユキナの話を遮るように、セラはスノウの方を向く。


そして、


「すーーっ!お兄のばぁか!!」

セラは深呼吸をして、スノウに叫ぶ。


「うお!?へ??」

スノウは慌てふためく。



「セ、セラさん!?」

「本当に!お兄は大馬鹿だよ!!」

セラはユキナを抱き寄せる。


「へ?な、何するんですか?」

「ユキちゃん、そんな自信はずっと持たなくていいの。仲間を倒す自信より、を持とう。」

「セラ、さん。」


ユキナは安心したのだろう。

今まで以上に良い笑顔をする。


「セラさん!ありがとうございます!」

「ううん、いいのいいの!ちょーっと、お兄のことコテンパンにしてくるから少し待ってて!」

「あ、いや、そこまでしなくてもーー。」


ダッダッダッ!

セラはスノウの元へ走り、説教をする。


「あはは、すみません、先輩。でも、私はあなたから離れません。何があっても。」

ユキナの中に大きな自信がついた。



昼飯を終えたホープは再びユーダリルに向けて歩き始めた。


「ふぁぁ。」

心なしかスノウの顔は疲れて見える。


「セラさん、さっきはありがとうございました。」

「どういたしまして!またお兄が変なこと言ったら教えてね!一生の後悔にさせるから!」

「あはは、たまには手加減してもいいですよ。」

セラとユキナの絆もさらに深まった。



そして、やっとユーダリルの村が遠くに見える。



「みんな、僕らの目的地が見えてきたよ!」

「あそこが、俺たちの修行した場所か。」



トップを育て上げたメインの村、ユーダリル。


そこに彼らのどのような歴史が眠るのか。

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