第六十七話 修行した村、トップの歴史

★ ユーダリル……各セクターから選ばれしトップ20名が、三年後に起きると言われていたヘルクリスマスを乗り切るために修行した場所。



スタッ、スタッ、スタッ。

ホープは村の正門から入る。


周りには屋台で野菜や肉を売る者、鍛冶屋や素材を売ってる場所など至って普通の村。



そして、少し高い位置に大きめな家がある。


「何と言うか、良くも悪くも普通の村だね。」

「リサくんはどんな村を予想したんだい?でも、確かに落ち着いたいい村だ。」


なかなかに活気もあり、住みやすい村No.1に選ばれそうである。



「あの家が村長さんの住むところでしょうか?」

「そうだろうね、ヒメノくん、みんな、行ってみようか。」

セドリックを先頭に、ホープは家に向かう。




コンッ、コンッ、コンッ。


「開いてるよ。入ってくれ。」

「失礼します。」


キィーッ。

セドリックがドアを開けると、そこには一人の中年の男が。


「っ!君たちは、まさか……。」

「はい、ホープとして活動しています、僕はセドリック・リーンベルです。重ねて、トップの五名もいますがーー。」


バタンッ!

男はいきなりホープの前に出て、頭を下げる。


「本当に、すまなかった。」

「へ?い、いきなり何を。」

セドリックは男に頭を上げるよう促す。


ユーダリルの村長。

ブライト・メトゥ。42歳。男。

黒い髪の中に白髪も混じり、顔は少し痩せている印象。

しかし、その見た目とは裏腹に腕や足には多くの筋肉と、傷が刻まれている。


ブライトはホープを応接室まで迎える。


「急にすまなかった、まさか、また会えるとは思わなくてね。」

「お会いできて嬉しいです、ブライト村長。ところで、何で私たちにいきなり謝罪を?」

「君は、ヒメノくんだね。相変わらず真面目そうだ。そんなの当然、謝罪ではすまないようなことを君たちにはやってきたんだ。」

ブライトは声を震わして答える。


「なあ、ブライト。正直言って、俺たちは記憶を消されてる。この十年間の記憶がないから正直あんたが俺らにしたことは分からないんだ。」

「き、記憶を!?まさか、オーディンがーー。」

「ブライトタン記憶を消すことについて、何か知ってるんですか!?」

リサが食いつくように質問する。



「詳しくは分からないが、あれは、オーディンのだと聞いたことがある。」

「特殊魔法?私たちで言う限界突破オーバードライブみたいなものでしょうか?」

「ユキナくんのイメージと似てるものだろう。ただ、オーディンの持つものはさらに厄介だ。」

「何がそんなに厄介なんですか?僕たちは、記憶を消す魔法のことしか聞いたことはありませんが。」



ザザザッ。カチャ。

ブライトは引き出しから一つの紙を出す。



「ここに書いてあるのは、私が独自に調べ上げたオーディンの魔法だ。」


そこに記載されているものは、


記憶消去キオクショウキョ

記憶改竄キオクカイザン

肉体支配ニクタイシハイ


この三つであった。


「何だよ、この力。こんなの、何でもありじゃねえか。」

「スノウくんの言う通りだ。そして、スノウくんは記憶消去を一度多く受けている。」

「セラの記憶を消してくれって時か。」

「そうだ、そして本当に君はセラリウムくんのことを忘れた。それによって、私たちも思い知らされた。オーディンはだと。」



場の空気が重くなる。


ホープの六人は、戦闘において右に出るものはそうそういないだろう。



しかし、記憶や肉体を自由に扱えるオーディンとは比べるものが違うジャンルの最強だ。



「ん?でも待ってくれ。何でこんな力あるなら、なんで俺たちをいいように操って世界を奪わなかったんだ?あいつの狙いは、世界の王になることだろ?」

「オーディンもそうしたかっただろう。……ただ、彼の魔法を寄せ付けないものがいたんだ。」


ブライトはトップの五人を見つめる。


「それって、戦神を宿したトップ達?セラ達20人のトップは戦神によって守られたってこと?」

「その線が一番濃厚だ。だから、オーディンはトップを始末することを優先した。」



少しずつ明かされていく世界の理。


オーディンは絶対的な存在であり、唯一反抗できるのはトップの人間のみ。


そこで、反乱軍は全力でトップの生き残りを守ることにした。



「この町も世界に散らばる反乱軍の一部だ。君らが望むことは可能な限り叶えたい。私たちに


ブライトは再度頭を下げる。


「うーん、まあ俺たちに力を貸してくれるのはとてもありがたいぜ。けど、一つ間違えてるぜ、ブライト。」


スノウは立ち上がりブライトを見つめる。



「俺たちは、今の人生に何も後悔をしていない。ここにいるのがその証明、これが、俺たちの生きてきた道なんだ。だから、過去の罪を償うんじゃない、俺たちの


スノウは自信たっぷりな目で語る。

そして、その顔には微笑みも。


「あ、ありがとう。君たちが知りたいことを何でも話そう。」

「そしたら、あたし達の戦神の正式名称フルネーム分かりますか!?」

「ああ、それならこの村から出た湖近くにある祠、に保管しているよ。」



この世界に詳しくなり、さらに強くなるチャンスをトップは得られたのだった。

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